* * *

「真由! 収穫した林檎をまとめておいて!」

「了解!」

「ぶーちゃん! 段ボールの仕分けをお願い!」

「へい!」

 あれから月日は流れ八年の歳月が経過した。大学を卒業した私は、故郷である長野に戻って来て林檎農園を継ぐための修行に明け暮れていた。
 最初は全て手探りだったけれど、両親やみんなに支えられてなんとか仕事を任せてもらえるまでには成長した。
 そんな私を、今も真由とぶーちゃんが側で支えてくれている。

「みんな! 北村さんから差入れのアイスよ!」

 顔を出した母の後ろで、おばさんがこちらに向かって手を振っている。

「じゃあ、休憩しよっか!」

「「わーい」」 

 真由とぶーちゃんに声をかけると、子供のように喜ぶ姿に苦笑する。
 二人が休憩に入ると私は農園の木々を点検しながら、お気に入りの場所で立ち止まった。
「んー!」と、青空に向かって大きく伸びをすると青い葉と林檎の甘い香りがこの心を癒してくれる。
 農園の仕事は力仕事で大変なことも多いけれど、昔から身体を動かし汗をかくことが好きな私には意外と合っていた。