「私は、これからも秋雄だけを想い続ける。だから、これからもずっと側にいて。そうじゃないと生きていけない」

 秋雄の存在こそが私の生きる理由。希望だから。

「ナツのバカ」

 伸びてきた腕に抱き締められると懐かしい匂いが私を包み込む。触れることができなくても、ちゃんと温もりを感じる。

「知らないからな。一生憑いてやる。一生想い続けてやる」

 少し怒ったような口調は秋雄の照れ隠し。だけど私を見つめる瞳は、どこまでも真っ直ぐでその気持ちを疑う方が難しい。
 だから私は病める時も健やかなる時もその言葉を信じて生きていく。

「ありがとう。秋雄」

 ニッと笑って見せると嬉しそうに笑う秋雄が、突然「その格好イカしてるな」と、親指を立てる。
 歳相応でなくてもダサくても、そうやって私の「好き」を認めてくれる秋雄が好きなんだ。

「キャラTを卒業するのはやめた」

 そう宣言すると、ホッとしたように微笑む秋雄の姿がユラユラと揺れている。涙のせいかと瞼を擦ってみたけれど、どんどん薄くなっていく姿に別れが近づいていることを悟った。
 本当はもっと話したいことが沢山あったけれど、これは今生の別れではない。だから私達は、ただ見つめ合い微笑み合う。

「またな」

「うん」

 やがてこの世界が秋雄だけを飲み込むと、突然夢から覚めたように一人取り残された世界には煩わしい蝉の鳴き声だけが聞こえた。
 だけど私は信じている。
 __姿が見えなくても、いつも側にいてくれると。

「帰ろうか。秋雄」 

 虚空にむかってそっと微笑むと、温かな気持ちで満たされていく心を抱いて私は新たな一歩を踏み出したのだった__。