この再会は恐らく互いの「執着」が生んだもの。だけど、それが奇跡かどうかを決めるのは私だ。

「ありがとう。側にいてくれて」

 そう微笑むと秋雄は不思議そうな顔をする。

「怖くないのか?」

「まあ、最初に現れた時は驚いたけど。今は呪われる覚悟も憑かれる覚悟もある」

「……そんな所で覚悟をつかうなよ」と、呆れる姿のどこを怖れたらいいのかわからない。

「俺だってナツには幸せになって欲しかった。それは本心だ。でも、その相手が俺じゃないと思うと……」

 途端に苦しそうな顔で俯く姿に胸が締め付けられる。

「……ごめんね。私が」

「自分が死んだことに関しては本当にナツを恨んだことは一度もない。あれは俺が悪い」

「関しては?」

 すかさず突っ込む私に苦笑すると、秋雄は両手の甲をこちらに向けおばけのポーズをする。

「他の男と幸せになろうとしてることに関しては、数回恨んだけどな。ごめんな」

「謝ることじゃないよ。私だって、きっと同じ思いになるはずだから」

 生身の人間はドラマの登場人物のようにはいかない。
 上手く過去と折り合いをつけたり。他人の幸せを無駄に願ったり。綺麗事だって上手く言えないものだ。
 だけど、だからこそ私にとっての「奇跡」は起きたのだと思う。

「成仏って難しいな」

 なんて嘆くものだから思わず笑ってしまう。

「しなくていいんじゃない? ずっと側にいれば」

「それは無理だ。ナツが他の男と」

「だから私は秋雄と生きていく覚悟を決めたの。姿が見えなくなっても声が聞こえなくなっても、側にいると信じるから。あんたの好きな農園は私が守るから」

「……ナツ」

 ユラユラと揺れる切れ長の瞳には、真っ直ぐとこの地に足をつけて立っている私の姿が映っている。