「それより、どうして現れたの? 本当は成仏する気がないとか?」

「お前が心配ばっかりかけるからだろ!」と、この手をパチリと叩く真似をする。

「本当に? あんた案外ねちっこい所があるから。秋雄の方こそ私に執着してるんじゃないの?」

「ただ、お前が心配だって言ってるだろ!?」

 なんて、ムキになるから余計に怪しい。

「正直、私だったら秋雄が他の人と幸せになるなんて嫌だ。地縛霊になろうが何だろうが一生側にいる。秋雄だって本当は私の側にずっといたんじゃないの?」

「そ、それは!」

 勢い良く口を開いたと思ったら、途端にバツの悪そうな顔をする。その姿に確信した私はそっと苦笑する。

「……どうりで肩が重かったわけだ」
 
 自分の肩を擦っていると秋雄がギロリと睨みつけてくる。

「ずっと側にいたわけじゃない。たまに眠っているみたいに意識がなくなることがあるから。でも、目覚めた時にはいつもナツの側にいた」

 __いつも。

「確かに俺は執着深いし、ナツが幸せそうな姿にも正直ムッとしてた」

 十二歳の秋雄にはわからないだろう。「幸せそう」の裏側にある苦悩も悲しみも。だけど全ては、秋雄が側にいてくれてると思いもしないで「それなりの幸せ」を望んだ私の責任。

「気付かなくて、ごめん」

「俺はずっとナツの名前を呼んでた。なのにダメだった。それが、あの日突然……」

 “__お、俺が見えるのか?”
 初めて再会した時、驚いた顔をしたのはそのせいだったんだ。