「真由。本当にありがとう。佐藤にも伝えといて? ぶーちゃんにはメールしとく」

「わかった。今度は、お盆に戻ってきたら夏実の誕生日も祝おう? 秋雄も喜ぶだろうしさ」

 秋雄を失ってから誕生日を迎えることが怖かった。その気持ちは、きっと一生消えはしないだろう。けれど、みんなと一緒ならば乗り越えていける。

「……真由。教えて欲しいことがあるの。秋雄の__」

 意を決して尋ねた私に真由は一瞬驚いた顔をした。けれどすぐに教えてくれた道のりは、記憶の中にしっかりと残っていた。

「一緒に行こうか?」

「大丈夫」

 心配そうな顔の真由に笑顔を見せる。
 私は色々なことから逃げてきた。でも今やっと自分なりに向き合うことができている。ならば、その場所も避けたたままにはしたくない。

「何かあったらすぐに連絡してよ? 夏実には私達がいるんだから」

 そう微笑む真由に礼を伝えると私達は連絡を取り合う約束を交わした。そして車から降りると、白いワゴン車はロータリーをグルリと一周してから去って行った。
 “__夏実には私達がいるんだから”
 “__ナツは一人じゃない”
 真由の言葉が秋雄の言葉が私の背中をそっと押す。そして佐藤やぶーちゃんの存在が私に勇気をくれる。いつまでも勝手に「孤独」に浸るのはやめよう。
 __私は一人じゃないん。
 駐輪場に停めてある自転車に跨ぐと、私は家までの距離を全速力でペダルを漕いだ。