そしてその想いは同情ではなく「思い遣る」と、いう温かな気持ち。
「お願いしてもいい?」と、尋ねる私に真由は「勿論だよー!」と笑ってくれる。
 思い遣りを受け取ったら思い遣りを返せばいい。いつか真由が困っていたら今度は私が力になる。そうやって誰かと支え合って生きていくことは「甘え」ではないと秋雄が教えてくれた。

「この真夏に駅まで歩くなんて正気?」

 冷房の効いた車内で行き先を告げると、ハンドルを握る真由は苦笑していた。

「夏実は昔から敢えて無茶したがる所があるから。本当、気をつけてよね」

「……すいません」

 子供を叱るように私を咎める姿からは、昔のどこか頼りない雰囲気は消えていた。
 __みんな前に進んでいる。
 __じゃあ私は?

「昨日、もしかしてお花市に行ったの?」

「うん」

「そっか」

 __私も前に進んでいる。
 何故、自分の成長とは気付き辛いものなのだろう。間違いなく私だってちょっとずつ変化しているというのに。

「……結婚って、どんな感じ?」

「何いきなり」

 突然の質問に真由は笑いながら答える。

「やっぱり他人同士が家族になるわけだから、大変だと今でも思うよ。だけど、佐藤とは一緒に努力することが苦にならなかったから」

「……努力」

「そう。結局は、一緒に家庭を築く努力をする時に全てが苦だと感じるなら苦しいだけで終わっちゃう。でもその苦労が、幸せに感じられるから頑張れるんだよ」と、少しだけ苦労を滲ませた微笑みに私よりも沢山のことを経験してきたことを知る。