“__証拠とか根拠とか。子供の時にはそんなものに縛られずに自由な答えがあっただろ?”
秋雄の言う通りだ。私は随分とつまらない大人になってしまった。
でも十二歳の秋雄は知らない。大人が根拠や証拠に頼るのは、信じた答えに裏切られるのが怖いから。子供のように自分の答えを、その答えを出した自分自身を信じ抜く勇気がないから。
大人は図体ばかりでかくなって肝心の肝は子供より小さい。
まだソヨソヨと揺れる木々を見渡していると生暖かい風を感じた。まだ湿度も温度も高いのに秋の匂いがする。
大きく深呼吸をしながら自分の肩を揉む姿は、おばあちゃんのようだと秋雄に笑われそうだ。だけど何だか肩が重くて怠い。
「夏実?」
ドキリと跳ねる心臓。木々の間から顔を出したのは啓太だった。
「人影が見えたと思って来てみたら、夏実が鬱蒼とした場所で立ち尽くしてるから驚いたよ」と、苦笑している。しかし、まだ肩を揉んでいる私に啓太は不思議そうな顔をする。
「どうした?」
「何か肩が重いっていうか……」
すると少し意地悪い笑みを浮かべる。
「憑いてるんじゃないの?」
「え?」
「そろそろ、お盆だし。昔、ばーちゃんがよくお盆は憑きやすいって言ってたよ」
どうやら私を怖がらせようとしているようだ。けれど、残念ながら実際の幽霊と数日過ごした私にはあまり効果はない。
秋雄の言う通りだ。私は随分とつまらない大人になってしまった。
でも十二歳の秋雄は知らない。大人が根拠や証拠に頼るのは、信じた答えに裏切られるのが怖いから。子供のように自分の答えを、その答えを出した自分自身を信じ抜く勇気がないから。
大人は図体ばかりでかくなって肝心の肝は子供より小さい。
まだソヨソヨと揺れる木々を見渡していると生暖かい風を感じた。まだ湿度も温度も高いのに秋の匂いがする。
大きく深呼吸をしながら自分の肩を揉む姿は、おばあちゃんのようだと秋雄に笑われそうだ。だけど何だか肩が重くて怠い。
「夏実?」
ドキリと跳ねる心臓。木々の間から顔を出したのは啓太だった。
「人影が見えたと思って来てみたら、夏実が鬱蒼とした場所で立ち尽くしてるから驚いたよ」と、苦笑している。しかし、まだ肩を揉んでいる私に啓太は不思議そうな顔をする。
「どうした?」
「何か肩が重いっていうか……」
すると少し意地悪い笑みを浮かべる。
「憑いてるんじゃないの?」
「え?」
「そろそろ、お盆だし。昔、ばーちゃんがよくお盆は憑きやすいって言ってたよ」
どうやら私を怖がらせようとしているようだ。けれど、残念ながら実際の幽霊と数日過ごした私にはあまり効果はない。