私はゆっくりと歩きながら明かり一つないこの敷地内で、いつかは両親がスッ転ぶのではないかと考えては気が重くなる。これは早急にライトでも取り付けなければ……。なんて今まで家業に興味がなかった私だけれど、今はみんなを繋いでくれたこの農園には長く栄えていて欲しいと願っている。そして両親には少しでも長生きをして欲しい。
 まるでこの心のように、でこぼことした道を歩いているとやっと家の明かりが見えてきた。

 “__怖いよー!おばけが出るよー!”
 秋雄に泣きついていた、あの頃の私はもういない。
 “__俺がいるから大丈夫だ!それにおばけが出たら三人になるから心強いだろ!”
 そして、いつも意味のわからない持論で励ましてくれた秋雄もいない。

「……寂しいな」

 呟いた瞬間、近くの木々がガサガサと揺れる音が聞こえる。タヌキか何かが通った音なのだろう。

「って、つまらない」

 自分の出した答えに自分で突っ込んでは苦笑する。
 もしかしたら「おばけ」の可能性だってあるのかもしれないのに、秋雄以外の幽霊とは遭遇したことのない私は存在自体を疑っている。だからこの暗がりを恐れることなく歩いている。歩けるようになってしまった。