“__秋雄の勉強机を片していたら一番上の引き出しに鍵が……”

「あ!」

 突然、声を上げた私にビクッと身体を強張らせるぶーちゃんの両肩を掴む。

「ぶーちゃん! お願い! 今すぐ秋雄の家まで連れて行って!」

 真実は幽霊のように消えることも逃げることもない。だから自分の自転車で悠々と移動しようが構わないはずなのに。
 __もう喪いたくはない。
 その気持ちが私を急かす。

「わ、わかった!」

 ぶーちゃんは理由も聞かずにエンジンをかけると車を走らせてくれる。私は気持ちを落ちつかせる為に深呼吸をしながら、秋雄とのやり取りを思い出していた。

 “__それ俺の生徒手帳だよね?”
 “__……でもナツに持っててもらえて良かった”

 生徒手帳を気にしていた理由は、もしかしたら「これ」にあるのかもしれない。そして、それは私に関係している。
 全ては推測に過ぎないけれど自分の勘が騒ぎだす。

 “__忘れてくれ。あの日のことも俺のことも”
 これは秋雄の最後の願いから背く行為になる。けれど、もし何か隠していたとしたら。今更遅いと言われようが無視はできない。真実を知らずに生きていくことはできない。