……羨ましい。
 無邪気で純粋で小さなことに喜べる幼さが。大人になってしまうと、今日という思い出の詰まった品よりも歳相応に身に付けていて恥ずかしくない物を選ぶ。
 __恥ずかしい。
 やっぱり秋雄の言う通り大人はつまらない。大切なことを、たくさん忘れていくから。

「もっと、可愛い彼女になりたかった」

「え?」

 秋雄は私の視線を追うと、その先にいたカップルを見つめている。

「ごめんね。私は可愛い気のない彼女だったよね」

 好きの二文字も素直に言えず。恥ずかしくてわざと冷たい態度をとったり、天の邪鬼なことを言ったり。たったの十一日間だったとはいえ、幼馴染みの延長線上のまま終わってしまった。

「ナツは今も昔も可愛いよ」

 驚いて顔を上げると珍しく照れているのか、その耳を赤く染め頭を搔いている。

「ひねくれてる所も天の邪鬼な所も」

「……本当に?」

「おう」

 自分にとっての欠点を、秋雄がそんな風に受け止めてくれていたなんて知らなかった。素直になれない自分が嫌で、可愛気のない自分がどうしようもなく嫌いで。なのに、好きな人の言葉によってこれからは少しだけそんな自分を受け入れることができそうな気がする。許すことができそうな気がする。