「私も気になるから少し部屋を見て来てもいいかな?」

「ええ。もちろん」

 不自然にならないように許可をとると、私はすぐに秋雄の部屋へと移動する。ドアノブを握り一度深呼吸をすると、ゆっくりと扉を開けた。

「よう!」

 緊張で固まっていた身体から力が抜ける。

「……本当、ぶれないね」

 マイペースな所は変わらない。正直、ネチネチと引き摺られるよりかはマシなのかもしれないけれど昨日の今日ではと苦笑する。

「今日は、おやきを作りにきたのか?」

「うん。秋雄はどうする?」

「俺はこの部屋で寛いでる」と、笑う秋雄の後ろには机がある。その一番上には確かに鍵穴の付いた引き出しがあった。

「ねえ。おばさんが、机の引き出しの鍵を探してたよ?」

 すると明らかに動揺を見せる姿にやっぱりな。と、思い苦笑する。

「中身はエロ本か」

「ちげーよ!」と、ムキになるから余計に怪しい。ニヤニヤと笑っているとギロリと睨まれた。

「将来やりたいことの資料とか」

 そこで、ふと一緒に駅前の甘味屋さんに行った時のことを思い出す。秋雄は将来の夢に必要な本を買ったと言っていたけれど。その本のことだろうか。

「そういえば秋雄の夢は」

「秘密」

 言葉を遮ると外方を向く。

「狡いよ。私は話したのに」

「普通ばっかりの夢な。大人って本当につまんねーな」

 久しぶりに聞いた決まり文句に本人がこれ以上、話すつもりがないことを知る。

「もういいですよ。つまらない大人はリビングに戻ります」

「ナツ」

 背を向けた瞬間、呼び止められた。私は振り返らずに言葉を待つ。

「明日は農園には行かないから。婚約者と忙しいだろうし」

 __九年前の明日。秋雄は農園に手伝いに来てくれた。
 しかし今は、婚約者が手伝っている。その姿を私も秋雄には見せたくはなかったから、これで良かったんだと思う。だけど一緒に過ごせるのは本当にあと僅か。一日たりとも、無駄にしたくないのも本音で答えられずにいると後ろで小さく笑う気配がした。

「十二日だけは俺の為に空けておけ」

「え?」

 思わず振り返ると秋雄が優しく目を細める。