「起きなさい。啓太君は農園のお手伝いしてくれてるわよ」

「っ!」

 飛び起きた私は最初にイビキの心配をする。しかし本人がいない以上、答えはわからずただ呆然としていると母は溜め息を盛らしながら部屋から出て行った。
 啓太がいるのに爆睡してしまった。相当疲れていたのかもしれない。
 寝巻きのまま堂々とリビングに向かう途中で、朝の作業を終えた啓太とバッタリ遭遇する。作業をするには動きにくそうなボタンネックの白シャツと、スリムパンツという組み合わせは実家に帰ってきたばかりの自分を見ているようだ。

「おはよう。やっとお目覚め?」

 白い歯を見せながら蟀谷からキラリと流れる汗を手で払う姿に「手拭いを巻けばいいのに」と、思わず本音が漏れる。

「手拭いなんて格好悪いだろ?」

 __格好悪い。
 確かに、私も帰省したばかりの時は同じことを思っていた。

 “__見てみろよ!オニューだぞ!格好良いだろ!”
 もしも秋雄なら喜んで手拭いを巻くだろう。我が家の手伝いをしてくれるからと、両親が手拭いをプレゼントした時もとても喜んでいた。ご当地キャラが描かれたものや古い和柄のもの。お世辞にもセンスが良いとは言えないけれど、秋雄は大切にしていた。

「夏実の家の林檎は美味しいから、どうやって作ってるのか興味があってさ。今日はお義父さんに付いて回って色々と教えてもらってたんだ」

「そうなんだ」

 口元が引きつらないように笑顔を浮かべる。
 “__夏実の家の林檎は世界一だからな!”
 それは秋雄の口癖だった。
 私はこの瞬間も啓太と秋雄を比較しては落胆している。