鈴木が激怒して奴に飛びかかっていった。「馬鹿め」と奴が言うと同時に奴の周りに結界が展開された。それによって鈴木の攻撃は防がれてしまい、逆にカウンターを受けることになった。「ぐあぁ!!」鈴木は苦痛の声をあげてその場に倒れ込んだ。俺は怒りの感情を抱いたまま駆け寄ろうとしたが、奴から放たれていた圧倒的なまでの力を前に足を止めてしまう。奴はニヤリと笑っていた。そして俺にこう告げてきた。
「佐藤よ、これでわかっただろう。お前は弱いのだ。このまま何もしなければ死ぬだけだ。だから選ばせてやろう。俺に従うか?それとも抗うか?」
「ふざけんな!誰がテメェの思い通りになんかなってたまるか!」
俺は迷わずに反抗的な態度をとった。
「ほう?まだわからないようだな?仕方がない。ならば教えてやるとしよう。お前達は俺の掌の上で踊らされていたということを」
その直後のことだった。突然、視界が暗くなった。
何事だと思い顔を上げるとそこには巨大な化け物がいた。そいつは一言で言うと悪魔だ。しかも、とてつもなく強い力を感じる。
「こいつは俺の力のほんの一部分に過ぎない。もしも俺を怒らせたのならば、この星そのものを破壊することだってできるのだぞ」と偉そうに言っている。どうやら、俺の実力を測るためにわざわざこんな事をやったらしい。
俺が何も言わずに黙っていると、そいつはさらに続けた。
「まさか、この程度の事で怯えているわけじゃないよな?」
その問いかけに俺は何も答えず無言のままマシンガンを構えて攻撃を開始した。
それからしばらくして、
「さすがだ!素晴らしいぞ!佐藤!俺はお前に期待している!もっと強くなれ!お前に力を与えてやる!」と叫んでいる。だが次の瞬間には姿が消えていた。「さて、それじゃあ行くとしますか」
俺が呟くと、それを聞いた仲間達が笑顔になった。「佐藤!お前、凄いな!さっきの一撃、最高だったぜ!」
「私、感動しました!」
「佐藤君、カッコよかったよ!」
こうして俺達はようやく街へと辿り着いたのであった。
俺達は街に入ると、早速ギルドに向かった。中に入ると、何人かの冒険者達が依頼ボードの前で真剣な表情を浮かべながら話し合いをしていた。俺達はその集団の後ろからこっそりと近付いていった。するとリーダーと思われる人物がこちらを振り向いた。どうやら気付かれたようだ。しかし、すぐに興味を失ったようで元の体勢に戻った。おそらく俺のことが目に入らなかったのだろう。俺って存在感が無いのかな?少し寂しい気持ちになりながらも受付に向かって歩いていく。ちなみにだが、高橋さんと山本は並んで歩いている。そして、俺が一歩遅れてついて行っている形だ。これだと高橋さんの胸の谷間が丸見えになっているのだけど、俺には全く見えない。やっぱり世の中って不公平だよな。そんなことを考えながら進んでいると、目的地に到着した。俺が高橋さんの肩を軽く叩くと、彼女は振り返って不思議そうに見つめてきたが、俺が何食わぬ顔をしていると彼女は視線を前に戻してくれた。俺はそのタイミングを見計らって受付に話しかけた。
「冒険者登録したいんだけど」と伝えると、女性は俺の顔を見て驚いた様子を見せた。
「あ、あんた生きていたのかい?さっき盗賊に襲われた時も、その後に現れた悪魔と戦っている最中も姿を見せなかったじゃないか!」と言われたが俺は冷静に対応した。「えっと、実は俺って一度死んでいるんですよ」と説明すると、彼女は「そ、そうなんだ」と微妙な反応をした。どうやら信じてもらえていないようだ。そこで高橋さんが「この人がさっき盗賊達を一人でやっつけちゃいました」と言うと、彼女は再び俺に視線を向けたが、やはり信じられないようだ。まあ、当然の反応といえば当然の反応だろう。というわけで俺は彼女に対して、マシンガンを見せながら事情を説明した。
「ほ、本当にすごいね……」
マシンガンの説明を終えると、受付の女性が目を丸くしながら言った。
「これで理解してもらえましたか?」
「うん!分かったよ!ありがとうね!」
俺が確認のために尋ねると、彼女は笑顔で返事をしてきた。
「それで、他に聞きたいことがあるんだけどいい?」
「はい、構いませんよ。」
俺は質問の内容を考えると、彼女に質問した。
「まずは一つ目。この世界の通貨はどんなものがあるの?」
「はい、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨、魔石、水晶があります」
「そっか、わかったよ。じゃあ次はこの世界に魔物は存在している?」
「はい、いますよ」
「そっか、ありがと」
よしよし、魔物はちゃんと存在するみたいだな。
「それじゃあ次は、俺をこの世界に連れてきたのはあんたか?」
「いえ、違いますよ」
即答されてしまった。「じゃあ誰が俺をこの世界に連れてきてくれたんだ?」
と聞いてみたが、答えてはくれなかった。
うーん、謎は深まるばかりだな。
「次は俺の能力について教えて欲しい」
「分かりました。それでは能力の確認を行いましょう」
「どうやって確認するの?」
「それでは右手を前に出してください」
俺は言われた通りに右手を前に出した。
すると、突然ステータス画面のようなものが現れた。そこにはこう書かれている。
名前:佐藤和真
性別:男
年齢:15歳
レベル:1
ギフト:
「おお!すげぇ!マジで勇者になってるじゃん!」思わず叫んでしまったぜ!
「えっと、それってどういうことですか?」
彼女は俺の独り言に反応して尋ねてきた。
「えっと、俺って魔王を倒した後にこの世界を救った救世主として称えられていたんですよ。」
そう答えると、彼女はとても驚いていた。
「凄いんですね!」と尊敬の眼差しを向けてきたので、
「あはは、照れるな〜」と冗談っぽく答えておくことにした。
「ところであなたの職業はなんだったんですか?」
俺の質問に、彼女は一瞬悩んだ様子を見せた後に「あ、はい!実は勇者様だったので、魔王を倒していただきたくてこの世界へとお連れさせて頂きました!」と言ってきたので、「ああ、なに言ってんの?俺は普通の学生だぜ?そんなことできるわけないだろ?」と答えると、
「いや、そんなはずは……だって、勇者様はもう既に……え?」と困惑した表情を浮かべている。そして数秒程考えた後に、
「なにかの手違いだったのかもしれませんね」と呟いたのであった。まあとりあえずは俺の死因については置いておくとしてだ。俺はあることが知りたかったんだよ。それを確かめないと気が済まないんだ。
「すみませんが、この国にはダンジョンがありますよね?」と尋ねると彼女は戸惑いながらも、
「は、はい。この国には現在三つ存在しています」と答えた。
「そこに行くことは可能でしょうか?」と聞くと彼女は首を横に振った。「申し訳ありませんが、現在そこは封鎖されており、入ることができなくなっているんです」
彼女はそう言うと、申し訳なさそうに謝ってきた。「そうですか。わかりました。それじゃあそろそろ行くことにします」
「待ってくれ!俺にも協力させてくれよ!」と鈴木が言ってきた。