気まずさがピークに達したので、私は家に帰ろうと体を反対方向に向けた。正直に言えば、龍斗麗華ペアをはじめ、大雅志乃ペア・秦仁茉由ペア・八雲大和ペアはとてもお似合いだ。それなのに私が大和を狙っている。そんなことを言えば殺されるも同然だろう。

 「ねぇ、さ。八雲の好きな人――――」

 「大和だってさぁ!」

大和と八雲の声だ。『八雲の好きな人』の後は聞けなかったが、2人が各々の好きな人の話をしているのは確実だ。
 (八雲に彼女の好きな人を聞いている。ということは、大和は八雲のことを気になっている??もしくは好きなのか?)
そうとしか私には考えられなかった。イヤホンでもしとけばよかった。ひどく後悔して、周りが見えなくなりそうだった。

 「もういっか。雲隠れだ。」

心から愛せる酸素のような人を求めて生きていた私の求めていた人は、私の人生からあっけなく消えてしまった。そう思うと、息がしづらくなってきた。

 ”カッカッカッカッ”

私のローファーの音が静寂な道に響く。

 「凪穂ちゃん!!何してんの?」

『凪穂ちゃん』。私のことをこう呼ぶのはあの8人の中では2人。八雲と大和だ。
2人のうちどちらか。すぐに分かった。下を向いて歩いていた私の視界に入ってきた影は私より大きかったから。

 「大和。なんで?」

大和の顔を見た瞬間、私の頬に涙の雫がつたっていった。
 
 「なんでって?その手!!」

大和にそういわれて、指をさされている左手を見た。それを見て、私は青ざめていった。

 「え?私。え―――...」