ここ私立に入る前まで元天才子役だった私には、簡単に演じ分けられる範囲だ。私が松本千景(まつもとちがけ)というのは誰も知らない。
入学したての時、「千景ちゃん推しなんだー」とみんなが言ってくれているのを聞いていた。が、その喜びも顔には出さなかった。
「やっほ~麗華!」
その時、4人の男の子の集団が近寄ってきた。ひだりから、大雅(たいが)、大和(やまと)、龍斗(りゅうと)、秦仁(じん)だ。
「おっ、みんな居るじゃん!」
真っ先に麗華のところに向かっていったのが龍斗。
「麗華!彼氏と別れた??」
「あっうん!別れたよー。」
「おっ!マジ??じゃあさ、次の彼氏候補とか―...??」
恋バナで盛り上がっている2人。そして、それを見たほかの3人もどんどんほかの女子に話しかけていく。
「志乃(しの)、あっちのほう行こ!」
「おっ、大雅~!なんか久々だねww行こ!」
「茉由(まゆ)、このゲームのさ、レベル全然上がんねーんだけど!?」
「OK。やるわ!どこでやるー??」
「八雲(やくも)!!聞いて、推してた千景ちゃんがさ!」
「大和、よく冷めないよね。千景ちゃん、もう引退しちゃったのにね。まあいいよ聞く―。」
(最悪、気まずっ。)