「そうか・・。」 リビングのテーブルで、二人の報告を聞いていた颯さんは目を瞑って暫く考えていた。
「その幽霊が座っていた席は、今使っている子に害が及ぶ可能性がある。今のうちに対処しよう。夏休みが終わってからだと危険だね。」
仁「何でそこの席にいたのか気になるね。」
颯「生きていた時に、そこで何かあったんだろうね。」
天「虐めとか・・かな。」
颯「何にしても、このままという訳にはいかない。魂が行くべき場所へちゃんと送らないといけないね。」
仁「でも僕たちだけでどうやって魂を浄化すればいいのか分からないんだ。最初はお父さんに”二人でやってごらん”と言われて嬉しかったけれど、いざ始めてみたら不安だし、どうやったら良いのか分からなくて。」
天「今まではお父さんと一緒に行って、浄化はお父さんがやっていたし、私たちはお母さんの笛を借りて行っていたから問題なく浄化できていたから、自分達だけで出来ると思ってしまったけど、今は私達だけだと、どうしたらいいのか分からない…。」
「初めてというのはそういうものだよ。でも二人はちゃんと出来るよ。やり方が分からないと言うが、幽霊の感情を読み取り声も掛けただろう?!それで一時的に姿を消した。それは対処出来たと云う事だ。だが根本的な解決にはならないから、この先の事は、私から知恵を授けよう。」
「「お願いします!!」」
「その幽霊はお前達が誘導された教室ではなく、違う場所の何かに憑依しているからそれを探すこと。憑依している物を見つけたらそれを浄化するんだ。浄化の方法は・・・・・・・・・・」
と、二人はアドバイスを受けた。
仁「分かった。やってみる。」
天「うん。頑張ってやってみる。」
「二人なら出来るよ。それに、どうしてもダメな時は私が行くから。」
「「はい!!!」」
「三時のおやつだよ~。」
一段落したところで、明日香は三人の前に涼し気なガラスの器に盛った水ゼリーを出した。
霊水をゼラチンで固めてきな粉と黒蜜をかけただけの簡単なものだが、夏にはぴったりのおやつだ。
天「美味しい~。」
仁「霊水は力の源だ~。」
颯「美味しいね。」
口々に美味しいと言われて「良かった~。」と、明日香は笑顔になった。
天「お母さん、フルート貸して。」
「はい、了解。いつ浄化に行くの?!」
仁「今夜。」
「これはまた・・。明日、仁はサッカーの練習あるんでしょ?!寝不足にならないようにしないと。」
仁「うん、大丈夫だよ」
「そっか。まあ、無理しないでね。」
そんなやり取りをして、私は元気が出るご飯を作ろうと支度を始めた。
夕食を早めに終えて、夜8時。二人は学校へと向かった。
天「夜の学校って、やっぱり不気味だね。」
仁「うん。これじゃ、学校に怪談話が有るのも頷ける。俺たちはお父さんと一緒に魔物を見ているから、少しの事では驚かないけど、普通の子ならこの雰囲気だけで怖くなるね。」
天「確かに。そのお陰で邪魔者はいないから、仕事(?)も捗りそうだけど。」
仁「じゃあ、昼間の続きをするか。あと見ていないのは、西側の調理室と理科室、校舎裏の物置だけだ。」
二人は分かれて、天は調理室、仁は理科室へ入った。
天は調理室を見回るが異常は無かったので、仁のいる理科室へ行った。
天「仁、どう?」そう言いながら理科室に入った。理科室は標本や実験道具、人体模型など、ホラーの材料が一番揃っている所だ。でも私達の探している気配はない。
仁「此処でもないようだね。」
天「うん。後は裏の物置だけだね。」
二人はそう話し、理科室から出て外へ移動し、校舎裏の物置へと近付いていった。
物置の前まで近付くと、ダイヤル式の南京錠が掛かっていた。南京錠を外さないと中には入れない、
と、普通なら悩むが、二人にはとっておきの方法がある。それは念動力である。今まで念動力は使った事は無いが、これは使わないと中に入ることが出来ない。
天「仁、念動力使おう。」
仁「それが良いね。俺がやるよ。」
天「うん、任せた。」
仁は物置の周りに結界を張り、念動力でダイヤルを合わせて解錠した。
長い間開けられていなかっただろう扉を手前に引くと、錆びついていた扉は ”ギィーーーー”
っという音を立てて開いた。中は真っ暗闇で暑さでむんむんした中に入れば、埃とカビの臭いが鼻を刺激し、異様な気配が漂っていた。仁が先に中へ足を踏み入れ続いて天も中へと入った。
間違いなくここには二人が捜している気配があった。
天「間違いないね。」
仁「うん。此処だったんだね。」
仁と天は持参した懐中電灯の明かりを頼りに注意深く周囲を見回した。
物置の中は、周りに棚が設置されていて理科や音楽の教材等が棚に並んでいた。物置の真ん中は、
机は机、椅子は椅子で重ねて置いてあり、所狭しと場所を取っている。だがよく見ると、奥の方に隠すように、その机と椅子だけ特別な物のように机と椅子がぽつんと置かれ、そこには昼間見た少女が俯いて座っていた。こちらからは背中しか見えないが、その背中は深い悲しみに満ちていた。
天は少女の感情に既視感を覚えていた。それは、天の前世の妖鬼の悲しみに似ていたのかもしれない。
そしてこの悲しみの原因を取り除かないと浄化してはいけないような気がした。
天は少女に話しかけてみることにした。
「貴女が悲しんでいる理由を教えてくれる?あなたを助けてあげられるかもしれないから。」
「・・・・・・・。」
少女から返事が返ってこないのは分かっていたが、天は話を続けた。
「私は前世で物凄く辛いことが有ったの。どうしようもなく悲しくて、辛くて鬼女になってしまった。そして人間の憎しみや恨み悲しみの感情を糧にして何百年も生きてた。そうすれば、いつの日か気持ちは収まるかもしれないと思って。だけど、ちっとも収まらなかった。それどころか酷くなってしまったの。自分ではどうしようも無い所まで追い込まれてしまったけど、私はお父さんとお母さんに助けられて生まれ変わることが出来たし、今は幸せ。だから貴女にもそんな思いはして欲しくない。貴女は私と同じ思いを抱えているから、今なら助けてあげられる。貴女の帰るべきところに帰って欲しい。」そう話しかけた。
仁「天・・・。」
天「貴女の帰るべきところに帰って。そうしたらあなたの魂は生まれ変われる。此処に居ちゃダメ。
迎えに来てもらおう。」
そんな天の説得に、少女の幽霊は背中を向けたまま椅子から立ち上がり、暫くそのまま立っていた。
そして、消え入りそうな位か細い声が聞こえてきた。
「・・る・・ない。・・事・・・・なかった。」
天「え?」
「分かるわけない・・。私の事は誰も見てなかった・・。」そう言った
「その幽霊が座っていた席は、今使っている子に害が及ぶ可能性がある。今のうちに対処しよう。夏休みが終わってからだと危険だね。」
仁「何でそこの席にいたのか気になるね。」
颯「生きていた時に、そこで何かあったんだろうね。」
天「虐めとか・・かな。」
颯「何にしても、このままという訳にはいかない。魂が行くべき場所へちゃんと送らないといけないね。」
仁「でも僕たちだけでどうやって魂を浄化すればいいのか分からないんだ。最初はお父さんに”二人でやってごらん”と言われて嬉しかったけれど、いざ始めてみたら不安だし、どうやったら良いのか分からなくて。」
天「今まではお父さんと一緒に行って、浄化はお父さんがやっていたし、私たちはお母さんの笛を借りて行っていたから問題なく浄化できていたから、自分達だけで出来ると思ってしまったけど、今は私達だけだと、どうしたらいいのか分からない…。」
「初めてというのはそういうものだよ。でも二人はちゃんと出来るよ。やり方が分からないと言うが、幽霊の感情を読み取り声も掛けただろう?!それで一時的に姿を消した。それは対処出来たと云う事だ。だが根本的な解決にはならないから、この先の事は、私から知恵を授けよう。」
「「お願いします!!」」
「その幽霊はお前達が誘導された教室ではなく、違う場所の何かに憑依しているからそれを探すこと。憑依している物を見つけたらそれを浄化するんだ。浄化の方法は・・・・・・・・・・」
と、二人はアドバイスを受けた。
仁「分かった。やってみる。」
天「うん。頑張ってやってみる。」
「二人なら出来るよ。それに、どうしてもダメな時は私が行くから。」
「「はい!!!」」
「三時のおやつだよ~。」
一段落したところで、明日香は三人の前に涼し気なガラスの器に盛った水ゼリーを出した。
霊水をゼラチンで固めてきな粉と黒蜜をかけただけの簡単なものだが、夏にはぴったりのおやつだ。
天「美味しい~。」
仁「霊水は力の源だ~。」
颯「美味しいね。」
口々に美味しいと言われて「良かった~。」と、明日香は笑顔になった。
天「お母さん、フルート貸して。」
「はい、了解。いつ浄化に行くの?!」
仁「今夜。」
「これはまた・・。明日、仁はサッカーの練習あるんでしょ?!寝不足にならないようにしないと。」
仁「うん、大丈夫だよ」
「そっか。まあ、無理しないでね。」
そんなやり取りをして、私は元気が出るご飯を作ろうと支度を始めた。
夕食を早めに終えて、夜8時。二人は学校へと向かった。
天「夜の学校って、やっぱり不気味だね。」
仁「うん。これじゃ、学校に怪談話が有るのも頷ける。俺たちはお父さんと一緒に魔物を見ているから、少しの事では驚かないけど、普通の子ならこの雰囲気だけで怖くなるね。」
天「確かに。そのお陰で邪魔者はいないから、仕事(?)も捗りそうだけど。」
仁「じゃあ、昼間の続きをするか。あと見ていないのは、西側の調理室と理科室、校舎裏の物置だけだ。」
二人は分かれて、天は調理室、仁は理科室へ入った。
天は調理室を見回るが異常は無かったので、仁のいる理科室へ行った。
天「仁、どう?」そう言いながら理科室に入った。理科室は標本や実験道具、人体模型など、ホラーの材料が一番揃っている所だ。でも私達の探している気配はない。
仁「此処でもないようだね。」
天「うん。後は裏の物置だけだね。」
二人はそう話し、理科室から出て外へ移動し、校舎裏の物置へと近付いていった。
物置の前まで近付くと、ダイヤル式の南京錠が掛かっていた。南京錠を外さないと中には入れない、
と、普通なら悩むが、二人にはとっておきの方法がある。それは念動力である。今まで念動力は使った事は無いが、これは使わないと中に入ることが出来ない。
天「仁、念動力使おう。」
仁「それが良いね。俺がやるよ。」
天「うん、任せた。」
仁は物置の周りに結界を張り、念動力でダイヤルを合わせて解錠した。
長い間開けられていなかっただろう扉を手前に引くと、錆びついていた扉は ”ギィーーーー”
っという音を立てて開いた。中は真っ暗闇で暑さでむんむんした中に入れば、埃とカビの臭いが鼻を刺激し、異様な気配が漂っていた。仁が先に中へ足を踏み入れ続いて天も中へと入った。
間違いなくここには二人が捜している気配があった。
天「間違いないね。」
仁「うん。此処だったんだね。」
仁と天は持参した懐中電灯の明かりを頼りに注意深く周囲を見回した。
物置の中は、周りに棚が設置されていて理科や音楽の教材等が棚に並んでいた。物置の真ん中は、
机は机、椅子は椅子で重ねて置いてあり、所狭しと場所を取っている。だがよく見ると、奥の方に隠すように、その机と椅子だけ特別な物のように机と椅子がぽつんと置かれ、そこには昼間見た少女が俯いて座っていた。こちらからは背中しか見えないが、その背中は深い悲しみに満ちていた。
天は少女の感情に既視感を覚えていた。それは、天の前世の妖鬼の悲しみに似ていたのかもしれない。
そしてこの悲しみの原因を取り除かないと浄化してはいけないような気がした。
天は少女に話しかけてみることにした。
「貴女が悲しんでいる理由を教えてくれる?あなたを助けてあげられるかもしれないから。」
「・・・・・・・。」
少女から返事が返ってこないのは分かっていたが、天は話を続けた。
「私は前世で物凄く辛いことが有ったの。どうしようもなく悲しくて、辛くて鬼女になってしまった。そして人間の憎しみや恨み悲しみの感情を糧にして何百年も生きてた。そうすれば、いつの日か気持ちは収まるかもしれないと思って。だけど、ちっとも収まらなかった。それどころか酷くなってしまったの。自分ではどうしようも無い所まで追い込まれてしまったけど、私はお父さんとお母さんに助けられて生まれ変わることが出来たし、今は幸せ。だから貴女にもそんな思いはして欲しくない。貴女は私と同じ思いを抱えているから、今なら助けてあげられる。貴女の帰るべきところに帰って欲しい。」そう話しかけた。
仁「天・・・。」
天「貴女の帰るべきところに帰って。そうしたらあなたの魂は生まれ変われる。此処に居ちゃダメ。
迎えに来てもらおう。」
そんな天の説得に、少女の幽霊は背中を向けたまま椅子から立ち上がり、暫くそのまま立っていた。
そして、消え入りそうな位か細い声が聞こえてきた。
「・・る・・ない。・・事・・・・なかった。」
天「え?」
「分かるわけない・・。私の事は誰も見てなかった・・。」そう言った