白龍は息苦しさに堪えかね、段々と意識を失いつつあった。(これまでか・・・。)そう覚悟して、
「もうよい。双黒よ、堕とすなら堕とすが良い。」
『一気にはやらん。俺の苦しみをその身に刻んでからだ。』
巨大な縄は白龍の身体に食い込み、更に締まっていく。これは暗黒の縄。これに縛られるといくら
藻掻いても地獄で永遠に縛られる。
更に黒龍は呪文を唱える。すると今度は黒く巨大な剣が空中に現れ白龍の頭上に移動した。
黒い剣は暗黒の剣。これに貫かれると地獄の使者に成り下がり、二度と白龍には戻れない。
『ククク。恐れる事は無い。俺とお前はまた地獄で一緒になるのだ。』
「・・・。」
暗黒の剣は白龍の頭上で止まり、黒い波動を纏って振動し始めた。そして、グーンという音と共に
剣は白龍目掛けて落ちてきたのだった。
グーーーン!ヒューーー! 剣に貫かれることを覚悟した白龍は静かにその時を待った。
だが、剣が白龍を貫くことは無かった。
眩い光が白龍を包み込んで結界が張られ、寸での所で剣を弾き飛ばし、シャドウに対峙したのは颯だった。
『またお前か。僕どもでは相手にならなかったと見える。』
「中々の数だったからな。私も味方を呼んだ。」
すると其処には東西南北を守る4人の明王が魔物と戦っていた。
東の降三世明王、西の大威徳明王、南の軍荼利明王、北の金剛夜叉明王。
四人の明王は、あっという間に魔物を消し去った。
因みに不動明王は四人の明王を率いている。
『く!五大明王・・・。』
「白龍は私が守る。」
『お前には関係無いではないか!何故守ろうとする。』
「私に命を授けてくれた不動様の意向だ。」
『ふん!不動明王などに、俺の気持ちは理解出来ん!すっこんでろ!』
「では、不動様・・、大日様に直接聞いてみるが良い。」
颯がそう言った瞬間に目も眩む光が満ち溢れ、光が収まったと同時に大日如来が姿を現した。
神々しい御姿の大日如来は、不動明王の本来の姿である。
『・・・。』
【双黒、もう雅白を憎むことは止めるのだ。其方に罰を与えたと同時に雅白も罰を受けたのだから。】
『罰を受けた?どう解釈したら雅白が罰を受けた事になるのだ!』
【雅白は自分の過ちを認め、双黒が堕ちてしまったのは自分への罰だと受け止め、現実を受け入れた。
この先双黒が、自分の置かれた状況を受け入れられず、自分を憎んで報復を仕掛けてきたとき、周りに迷惑が掛からないように山奥のこの地に退いた。そして其方は自分の過ちを受け入れずに雅白を憎んだ。其方が過ちを認め、心から行いを正せば元の姿に戻れたやも知れぬ。だが其方は暗黒神に心を売った。それが其方と雅白の違いであり、今の状況なのだ。】
『・・・・・・・・・。ククク。ハッハッハ!!ハーッハッハッハ!!!』
シャドウはひたすら笑い続け、それはしばらく続いた。
『俺が現実を受け入れなかったからこの状況に陥っただと?!過ちを認め、行いを正せば元に戻れただと!ククク。今更だ!もう遅い。俺は魔神シャドウとなった。心底お前達とは相容れない存在となったんだ。』
【其方はもう龍神には戻れない。だが、怨嗟の心と暗黒神への忠誠を捨て去れば私が救おう。其方は人間として生まれ変わることが出来る】
『人間?長生きしても、せいぜい100年程しか生きられない者になりたいと思うか?!』
【確かに人間は長く生きることは出来ない。だが、その分皆で支え合い、慈しみ、懸命に生きる努力をしている。其方には学びの場になるだろう。】
『千年以上も生きている俺が今更学びだと?!笑止千万!!!』
【人間として精一杯生きて慈しみの心を育めば、神仏の世界へ近づく。そして何度も生まれ変わりを繰り返していけば、必ず眷属への道も開ける。雅白も其方が還ってくることを願っている。】
シャドウは大日如来の言葉に僅かに動揺を見せた。だが、後には戻れないという思いが大きかった。
『本当に今更だ!!俺は魔神シャドウだ!!』
その時、雅白が口を開いた。
「双黒、其方と今一度彼の地を治めたい。吾は千年でも二千年でも其方が還って来るのを待つつもりだ…。」
その言葉にシャドウは動揺が激しくなっていった。
『・・! 俺は暗黒神に魂を売った。地獄が俺の居場所なのだ!』
「大日様に縋れば良い。吾の元にもう一度還って来て欲しい。」
『・・・・』
シャドウは迷い絶句した。そして、何か言おうとした時、地面から突然衝撃が走った。それは地の底から放たれた雷で、その衝撃でシャドウは一瞬の内に体の自由が奪われ、動かなくなった。
「双黒!!」 雅白は驚愕し、必死に呼ぶが返事は無かった。
【暗黒神か・・。ならば、吾もこの姿になろうぞ。】 そう言って、憤怒の不動明王の姿となった。
そして、颯に話しかけた。
【颯。其方と吾は同じもの。今この時、吾とひとつになれ。さすれば力は無限になる。】
「はい。」 返事をした颯が不動明王に身体を預けると一瞬で身体が一つになった。
不動明王はシャドウの身体に結界を張り、地の底に連れ去られないように固定した。
そして地面に俱利伽羅剣を刺し、最強の真言を唱えた。
”ノウマク サラバタタ ギャテイビャク サラバボッテイビャク サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン”
すると俱利伽羅剣から、先ほど地の底から放たれた雷など些末だったと思うほどの強烈な雷が地の底へと伝わっていった。
その衝撃は尋常ではなく、暗黒神の断末魔ともとれるような咆哮が聞こえた。
静寂が戻り、不動明王は静かに双黒へ呪文を呟いた。すると、黒龍の姿が徐々に変化し、段々と小さな姿になり最後には人間の姿に変わったのだった。そして颯に何事かそっと耳打ちした。
それから、
【颯、後の事は頼むぞ。】そう言って不動明王は颯に白龍と双黒の事を任せて消え去った。
颯は白龍の結界を解き、怪我を治した。そして白龍に話しかけた。
「雅白。不動様から言付けられたことが有る。」
『?!』
「双黒は記憶を消され、これから人間として生きる。人間として生きていく上でどのような選択をするかは双黒次第。その見守りは私がすることになった。そして、雅白には私が新たな名を付ける事になった。」
『其方が?!』
「ああ。私が名付けるのは嫌か?」
『ふ・・。そのような事は無い。良い名をつけてくれ。』
「 ”奏白”。 双黒の”そう”を奏に変え、何時かまた一緒に民を守り平和を奏でるという意味を込めた。」
『奏白・・・。良き名だ・・。』
「奏白。これからもこの地を守り、双黒が還ってくるのを待つのも良し。私の与り知らぬ事にはなるが、見守るも良しだ。」
『双黒は其方に任せた。吾はこの地を守る。だが、吾も力になりたい。連絡は何時でも待っている。』
「分かった。私の事は颯と呼べ。きっと長い付き合いとなるだろう。宜しく頼む。」
『颯。永遠に我が善き友となった。』
「私は双黒を都へと連れてゆく。そこで出直しとなる。では、さらばだ。」
『双黒を頼んだぞ。颯よ。』
そして颯は双黒を東の都へと連れて行った。颯はその後現在まで、生まれ変わりを繰り返す双黒の人生を見守っている
K高原で白龍と出会い、仁と天を通じて不動明王と話が出来、色々な話を聞かされた私はカルチャーショックが強すぎて知恵熱(?!)が出て翌日寝込んだ。
熱が出ているのに妙に頭が冴えているので、頭の中で整理してみた。
白龍の話によると、颯さんの事を良く思わない眷属が颯さんと私と仁と天の命を狙っているので、白龍が私達の守護をすると言った。仁と天を通じて不動明王と話をして、白龍が守護する事を認めてくれた。
それは有難い事ではあるが、何故守護を申し出たのかは、颯さんから聞いた白龍との過去。
颯さんを善き友として、力になろうとしてくれていることは本当に嬉しかった。
同時に白龍と黒龍の過去に、やるせない気持ちと共に今は人間として頑張っている黒龍が、再び白龍とコンビが復活することを心から願った。
「もうよい。双黒よ、堕とすなら堕とすが良い。」
『一気にはやらん。俺の苦しみをその身に刻んでからだ。』
巨大な縄は白龍の身体に食い込み、更に締まっていく。これは暗黒の縄。これに縛られるといくら
藻掻いても地獄で永遠に縛られる。
更に黒龍は呪文を唱える。すると今度は黒く巨大な剣が空中に現れ白龍の頭上に移動した。
黒い剣は暗黒の剣。これに貫かれると地獄の使者に成り下がり、二度と白龍には戻れない。
『ククク。恐れる事は無い。俺とお前はまた地獄で一緒になるのだ。』
「・・・。」
暗黒の剣は白龍の頭上で止まり、黒い波動を纏って振動し始めた。そして、グーンという音と共に
剣は白龍目掛けて落ちてきたのだった。
グーーーン!ヒューーー! 剣に貫かれることを覚悟した白龍は静かにその時を待った。
だが、剣が白龍を貫くことは無かった。
眩い光が白龍を包み込んで結界が張られ、寸での所で剣を弾き飛ばし、シャドウに対峙したのは颯だった。
『またお前か。僕どもでは相手にならなかったと見える。』
「中々の数だったからな。私も味方を呼んだ。」
すると其処には東西南北を守る4人の明王が魔物と戦っていた。
東の降三世明王、西の大威徳明王、南の軍荼利明王、北の金剛夜叉明王。
四人の明王は、あっという間に魔物を消し去った。
因みに不動明王は四人の明王を率いている。
『く!五大明王・・・。』
「白龍は私が守る。」
『お前には関係無いではないか!何故守ろうとする。』
「私に命を授けてくれた不動様の意向だ。」
『ふん!不動明王などに、俺の気持ちは理解出来ん!すっこんでろ!』
「では、不動様・・、大日様に直接聞いてみるが良い。」
颯がそう言った瞬間に目も眩む光が満ち溢れ、光が収まったと同時に大日如来が姿を現した。
神々しい御姿の大日如来は、不動明王の本来の姿である。
『・・・。』
【双黒、もう雅白を憎むことは止めるのだ。其方に罰を与えたと同時に雅白も罰を受けたのだから。】
『罰を受けた?どう解釈したら雅白が罰を受けた事になるのだ!』
【雅白は自分の過ちを認め、双黒が堕ちてしまったのは自分への罰だと受け止め、現実を受け入れた。
この先双黒が、自分の置かれた状況を受け入れられず、自分を憎んで報復を仕掛けてきたとき、周りに迷惑が掛からないように山奥のこの地に退いた。そして其方は自分の過ちを受け入れずに雅白を憎んだ。其方が過ちを認め、心から行いを正せば元の姿に戻れたやも知れぬ。だが其方は暗黒神に心を売った。それが其方と雅白の違いであり、今の状況なのだ。】
『・・・・・・・・・。ククク。ハッハッハ!!ハーッハッハッハ!!!』
シャドウはひたすら笑い続け、それはしばらく続いた。
『俺が現実を受け入れなかったからこの状況に陥っただと?!過ちを認め、行いを正せば元に戻れただと!ククク。今更だ!もう遅い。俺は魔神シャドウとなった。心底お前達とは相容れない存在となったんだ。』
【其方はもう龍神には戻れない。だが、怨嗟の心と暗黒神への忠誠を捨て去れば私が救おう。其方は人間として生まれ変わることが出来る】
『人間?長生きしても、せいぜい100年程しか生きられない者になりたいと思うか?!』
【確かに人間は長く生きることは出来ない。だが、その分皆で支え合い、慈しみ、懸命に生きる努力をしている。其方には学びの場になるだろう。】
『千年以上も生きている俺が今更学びだと?!笑止千万!!!』
【人間として精一杯生きて慈しみの心を育めば、神仏の世界へ近づく。そして何度も生まれ変わりを繰り返していけば、必ず眷属への道も開ける。雅白も其方が還ってくることを願っている。】
シャドウは大日如来の言葉に僅かに動揺を見せた。だが、後には戻れないという思いが大きかった。
『本当に今更だ!!俺は魔神シャドウだ!!』
その時、雅白が口を開いた。
「双黒、其方と今一度彼の地を治めたい。吾は千年でも二千年でも其方が還って来るのを待つつもりだ…。」
その言葉にシャドウは動揺が激しくなっていった。
『・・! 俺は暗黒神に魂を売った。地獄が俺の居場所なのだ!』
「大日様に縋れば良い。吾の元にもう一度還って来て欲しい。」
『・・・・』
シャドウは迷い絶句した。そして、何か言おうとした時、地面から突然衝撃が走った。それは地の底から放たれた雷で、その衝撃でシャドウは一瞬の内に体の自由が奪われ、動かなくなった。
「双黒!!」 雅白は驚愕し、必死に呼ぶが返事は無かった。
【暗黒神か・・。ならば、吾もこの姿になろうぞ。】 そう言って、憤怒の不動明王の姿となった。
そして、颯に話しかけた。
【颯。其方と吾は同じもの。今この時、吾とひとつになれ。さすれば力は無限になる。】
「はい。」 返事をした颯が不動明王に身体を預けると一瞬で身体が一つになった。
不動明王はシャドウの身体に結界を張り、地の底に連れ去られないように固定した。
そして地面に俱利伽羅剣を刺し、最強の真言を唱えた。
”ノウマク サラバタタ ギャテイビャク サラバボッテイビャク サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン”
すると俱利伽羅剣から、先ほど地の底から放たれた雷など些末だったと思うほどの強烈な雷が地の底へと伝わっていった。
その衝撃は尋常ではなく、暗黒神の断末魔ともとれるような咆哮が聞こえた。
静寂が戻り、不動明王は静かに双黒へ呪文を呟いた。すると、黒龍の姿が徐々に変化し、段々と小さな姿になり最後には人間の姿に変わったのだった。そして颯に何事かそっと耳打ちした。
それから、
【颯、後の事は頼むぞ。】そう言って不動明王は颯に白龍と双黒の事を任せて消え去った。
颯は白龍の結界を解き、怪我を治した。そして白龍に話しかけた。
「雅白。不動様から言付けられたことが有る。」
『?!』
「双黒は記憶を消され、これから人間として生きる。人間として生きていく上でどのような選択をするかは双黒次第。その見守りは私がすることになった。そして、雅白には私が新たな名を付ける事になった。」
『其方が?!』
「ああ。私が名付けるのは嫌か?」
『ふ・・。そのような事は無い。良い名をつけてくれ。』
「 ”奏白”。 双黒の”そう”を奏に変え、何時かまた一緒に民を守り平和を奏でるという意味を込めた。」
『奏白・・・。良き名だ・・。』
「奏白。これからもこの地を守り、双黒が還ってくるのを待つのも良し。私の与り知らぬ事にはなるが、見守るも良しだ。」
『双黒は其方に任せた。吾はこの地を守る。だが、吾も力になりたい。連絡は何時でも待っている。』
「分かった。私の事は颯と呼べ。きっと長い付き合いとなるだろう。宜しく頼む。」
『颯。永遠に我が善き友となった。』
「私は双黒を都へと連れてゆく。そこで出直しとなる。では、さらばだ。」
『双黒を頼んだぞ。颯よ。』
そして颯は双黒を東の都へと連れて行った。颯はその後現在まで、生まれ変わりを繰り返す双黒の人生を見守っている
K高原で白龍と出会い、仁と天を通じて不動明王と話が出来、色々な話を聞かされた私はカルチャーショックが強すぎて知恵熱(?!)が出て翌日寝込んだ。
熱が出ているのに妙に頭が冴えているので、頭の中で整理してみた。
白龍の話によると、颯さんの事を良く思わない眷属が颯さんと私と仁と天の命を狙っているので、白龍が私達の守護をすると言った。仁と天を通じて不動明王と話をして、白龍が守護する事を認めてくれた。
それは有難い事ではあるが、何故守護を申し出たのかは、颯さんから聞いた白龍との過去。
颯さんを善き友として、力になろうとしてくれていることは本当に嬉しかった。
同時に白龍と黒龍の過去に、やるせない気持ちと共に今は人間として頑張っている黒龍が、再び白龍とコンビが復活することを心から願った。