9. 結芽の夢
次の日結芽はすっかり元気になっていた。
「体調はどう?」
「おかげさまで、すごく快調だよ。身体が嘘みたいに軽いの。」
「良かった。もう大丈夫だよ。昨日お父さんが祓ったからね」
本当は颯さんも頑張ったけど。と心で言う。
「護摩焚きしてもらっている時ね。なんか途中から夢を見ていた気がするの。」
「どんな夢?」
「笑わないでね。夢だから。」
「うん」
「明日香がね。大きな白い犬に乗ってたの。それでその犬と一緒に私が見た鎧武者と戦ってた。」
「え!!」
心臓が飛び出す寸前だった。結芽にも話してない秘密。バレてないよね?と作り笑いを浮かべて平静を保つ。
「夢は何でもありだからね。」と誤魔化した。
「そうだよね。でもほんとにありがとう。明日香にお願いしなかったらどうなっていたか分からなかったよ。」
「そう言ってもらえて良かった!」
「あとね、お兄さんいるって言ったけど、姿見えないね」
「うん、今は西の古都でお坊さんの修行中だけど。」
「ここに住んでないの?」
「うん。何で?」
「ううん。何でもない。」それ以上は何も言わなかった。
「良かったら今日も泊まる?」と聞くと
「ううん。帰るよ。」
「そっか。今度は遊びに来てね。」
「ありがと。絶対来るからね。祈禱してもらった代金払わないと。明日香と一緒に。」
「そうだったね。じゃ、後日一緒に払おうね。」
そして結芽は帰っていった。だが一抹の不安が残ったのだった。。
**
結芽はアパートにいた。
わずか一週間前に自分の身に起こったことがまだ信じられなかった。
自分の身にこんなことが起こるなんて考えもしなかった。
明日香の実家がお寺だと知って、藁にもすがる思いで相談した。
彼女はすぐお父さんにお願いしてくれたので、早く対処してもらったみたいだ。
後から聞けばお父さんは有名な霊能力者だと聞いた。相談者が多く訪れて相当忙しいのに
すぐ相談に乗ってくれたのは彼女のお陰である。彼女には感謝しかない。
彼女とはひょんな事で知りあったけど、今思えば嬉しい出会いだった。私はピアニストを目指して勉強中で、彼女はフルートを勉強していて、正直彼女ほどの腕前なら今すぐプロになっても通用すると思う。
それもそのはず、彼女のお母さんは大好きなフルーティストの霧島美和さん。将来ピアニストとして一緒に舞台に立ちたいと思っている。
お父さんは住職さんで有名な霊能力者、お兄さんもいると聞いた。彼女には話さなかったけど、この間泊まった時若い男の人の姿を見たのよね。
用意してくれた客間で眠れずに窓から外を見ていたら、着流し姿の男の人が見えた。
背が高くすらっとして肩まで伸びた白銀の髪だった。遠目にも綺麗な人だと思った。
お兄さんかな?と思ったけど食事の時もそんな人はいないし、明日香も何も言わない。私の見間違いかなと思った。
それに此処はお寺だから不思議な事の一つや二つあってもおかしくないしね。と自分を納得させた。
護摩祈願をしてもらっているときも瞼に不思議な光景が映った。
浄化の途中で眠っていたのかもしれないけど、明日香が大きな白い山犬に乗って鎧武者と戦っていた。しかも私が見た男の人と一緒に戦ってた。
これも、私の信じられないような体験のせいで見た夢かもしれないけれど、すごくリアルな夢だなあと思ったのは確かだった。
次の日結芽はすっかり元気になっていた。
「体調はどう?」
「おかげさまで、すごく快調だよ。身体が嘘みたいに軽いの。」
「良かった。もう大丈夫だよ。昨日お父さんが祓ったからね」
本当は颯さんも頑張ったけど。と心で言う。
「護摩焚きしてもらっている時ね。なんか途中から夢を見ていた気がするの。」
「どんな夢?」
「笑わないでね。夢だから。」
「うん」
「明日香がね。大きな白い犬に乗ってたの。それでその犬と一緒に私が見た鎧武者と戦ってた。」
「え!!」
心臓が飛び出す寸前だった。結芽にも話してない秘密。バレてないよね?と作り笑いを浮かべて平静を保つ。
「夢は何でもありだからね。」と誤魔化した。
「そうだよね。でもほんとにありがとう。明日香にお願いしなかったらどうなっていたか分からなかったよ。」
「そう言ってもらえて良かった!」
「あとね、お兄さんいるって言ったけど、姿見えないね」
「うん、今は西の古都でお坊さんの修行中だけど。」
「ここに住んでないの?」
「うん。何で?」
「ううん。何でもない。」それ以上は何も言わなかった。
「良かったら今日も泊まる?」と聞くと
「ううん。帰るよ。」
「そっか。今度は遊びに来てね。」
「ありがと。絶対来るからね。祈禱してもらった代金払わないと。明日香と一緒に。」
「そうだったね。じゃ、後日一緒に払おうね。」
そして結芽は帰っていった。だが一抹の不安が残ったのだった。。
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結芽はアパートにいた。
わずか一週間前に自分の身に起こったことがまだ信じられなかった。
自分の身にこんなことが起こるなんて考えもしなかった。
明日香の実家がお寺だと知って、藁にもすがる思いで相談した。
彼女はすぐお父さんにお願いしてくれたので、早く対処してもらったみたいだ。
後から聞けばお父さんは有名な霊能力者だと聞いた。相談者が多く訪れて相当忙しいのに
すぐ相談に乗ってくれたのは彼女のお陰である。彼女には感謝しかない。
彼女とはひょんな事で知りあったけど、今思えば嬉しい出会いだった。私はピアニストを目指して勉強中で、彼女はフルートを勉強していて、正直彼女ほどの腕前なら今すぐプロになっても通用すると思う。
それもそのはず、彼女のお母さんは大好きなフルーティストの霧島美和さん。将来ピアニストとして一緒に舞台に立ちたいと思っている。
お父さんは住職さんで有名な霊能力者、お兄さんもいると聞いた。彼女には話さなかったけど、この間泊まった時若い男の人の姿を見たのよね。
用意してくれた客間で眠れずに窓から外を見ていたら、着流し姿の男の人が見えた。
背が高くすらっとして肩まで伸びた白銀の髪だった。遠目にも綺麗な人だと思った。
お兄さんかな?と思ったけど食事の時もそんな人はいないし、明日香も何も言わない。私の見間違いかなと思った。
それに此処はお寺だから不思議な事の一つや二つあってもおかしくないしね。と自分を納得させた。
護摩祈願をしてもらっているときも瞼に不思議な光景が映った。
浄化の途中で眠っていたのかもしれないけど、明日香が大きな白い山犬に乗って鎧武者と戦っていた。しかも私が見た男の人と一緒に戦ってた。
これも、私の信じられないような体験のせいで見た夢かもしれないけれど、すごくリアルな夢だなあと思ったのは確かだった。