「それで……、何で僕も呼ばれているんですか?」
数に対抗して、王室は質で勝負するという考えに出た。
それにより、各領から実力のある戦士を徴収することになった。
騎士爵のレオの所にもその話が来たのだが、ヴェントレ島の招集書には何故かレオが指名されていた。
その理由が分からず、レオは招集書を持って来たファウストに理由を尋ねた。
「……カロージェロとイルミナートがルイゼン領にいやがった」
「っ!! 他国に逃げたんじゃなかったのですか!?」
「あぁ……」
ファウストの思わぬ答えに、レオは目を見開く。
度重なる領地の経営失敗に加え、レオに暗殺者を仕向けたことで指名手配されることになった父と兄。
てっきり、国の追っ手が来る前にどこかの国に逃げてしまったと思っていた。
それがよりにもよってルイゼン領にいるなんて思いもしなかった。
「奪還戦にその姿を現し、参加していたローデラ男爵を殺害したそうだ」
「くっ! そうですか……」
そもそも罪を犯しておいて逃げ出したこと自体国に迷惑をかけているというのに、貴族の一人を手にかけるなんてどれだけふざけた奴らなのだ。
余計なことをしないで、さっさとこちら側に捕まって欲しいものだ。
「でも、父たちが現れたからといって、なんで僕が?」
父たちが他国に逃げていなかったのは分かったが、だからといって自分が呼ばれる理由が分かった訳ではない。
自分のスキルは、フェリーラ領の領主のメルクリオの協力を得て、フェリーラ領以外に広がらないようにしている。
そのため、レオの戦闘力が知られているということはないと思われる。
なのに、招集されたのはどういうことなのだろうか。
「さあ? お前を使って誘き出そうって考えなのかもな……」
「……囮ですか?」
「かもしれないな……」
父たちが国から逃げ出そうとしたのは、レオの暗殺を失敗したことによる所もある。
もしもレオの姿を見つければ、カロージェロたちが何かしらの反応を示すかもしれない。
そのために呼び寄せたとなると、ただの囮として利用するつもりなのかもしれない。
あくまでもファウストの考えなので正解とは言い切れないが、たしかにそう考えることも出来る。
「いくらあの2人の頭がおかしいといっても、そんな手に乗るとは思いませんが?」
「……辛辣だな」
腐っていても一応は自分の父親たちのことを、レオはやんわりバカ呼ばわりする。
いつも穏やかな気性のレオがそういうのだから、相当2人のことを嫌っているのだろう。
むしろいつも穏やかな人間の方が、怒りが爆発した時の恐ろしさは上なのかもしれない。
そう感じたファウストは、戦場でレオが人形を使ってカロージェロたちをボコボコにしている映像が頭に浮かんできて、冷たい汗が背中を伝った。
「まぁ、正確な理由は分からないが、国に呼ばれた以上行くしかないだろう」
「困りましたね……」
レオとしては行きたくないが、たしかに国からの通達を断れる理由が存在しない。
そもそも、直々に指名されての招集なので、断ることなんて出来る訳がない。
断りようものなら、陛下への印象が最悪なことになりそうだ。
そうなるのだけは勘弁願いたい。
「こんな事なら強い人間を出せと言われた方が良かったかもしれないですね……」
領内の精鋭を出せと言うなら、この島には強い人間がいる。
特にガイオはかなりの強さを誇っているため、文句はないはずだ。
「……いや、どっちにしろお前が行くことになったんじゃねえか?」
「……そういえば、そうですね……」
ファウストに言われてよく考えたら、ガイオを送るのは無理だとレオは思いなおした。
ガイオをルイゼン領に送ってムツィオにその姿を見られてしまったら、エレナが生きているということがバレてしまうかもしれない。
そうなったら、王国軍相手にそんな暇はないとは思うが、ムツィオからエレナ暗殺の刺客を送られてくるかもしれない。
そんなことされるのは面倒臭いことこの上ないため、ガイオを送ることは最初から無理だった。
やっぱり、レオが行くことになっていたかもしれない。
「俺から忠告をするなら、お前の能力はなるべくなら使わないようにしろよ」
大量の人形を使った大軍勢。
それが1人の人間のスキルによって形成されているということを知ったら、最前線での戦闘をさせられることになるだろう。
しかも、それは今回だけでなく、今後何かある度に招集されることになるかもしれない。
そうなったら、レオ1人が功を得ることになり、他の貴族たちからどう思われるか分からない。
中には妬みや嫉みで、レオに八つ当たりをしてくるかもしれない。
それが少数ならまだしも、多数になったらレオの排除を仕掛けてくるかもしれない。
そうならないためにも、ファウストとしては大量の人形による戦闘を回避して欲しいところだ。
「しかし、ルイゼン領を奪還しないとエレナがいつまでも貴族に戻ることができないですし、もしもこの能力を知られた時にどうして使わなかったかと言われるかもしれないですから……」
「そうか……」
国としてはルイゼン領奪還を済ませ、内乱のようなこの状況を早々に収束したいところだ。
そのために精鋭を集めての戦闘を起こそうとしているのだ。
ここでレオが活躍すれば、エレナをルイゼン領に戻すように王に進言することも出来るようになるかもしれない。
エレナと、彼女を守ろうと島へと逃れてきた者たちも大勢いる。
もしもエレナが貴族に戻れるようになったら、彼らも一緒に島を去るかもしれない。
それでも、みんなの幸せを考えるなら仕方のないことだと思っている。
そうなったらそうなったで、レオはまた地道に島を発展させていけば良いだけだと思っている。
「それにしても、平民を奴隷にしたりスケルトンを操るなんて、ムツィオは父以上にとんでもない奴ですね……」
「全くだ」
招集に従い、レオがルイゼン領へ向かわなければならないのは分かった。
そのため、ルイゼン領の状況を聞いたレオは、またも腹を立てることになった。
領民を強制的に奴隷にして戦わせるなんて、ムツィオはどういう神経をしているのだろうか。
父のカロージェロも領民のことを考えない政策ばかりをして領地をダメにした人間だが、ムツィオはそれ以上に領民のことを考えないやり方をしている。
「領民あっての領主でしょう!」
「……そうだな」
レオは昔から受け入れた領民を大切にしてきたし、ファウストもそれを近くで見てきた。
多くの人間がヴェントレ島に移ってきて幸せに暮らしている。
ここの領民は良い領主に恵まれている。
ファウストは、若いながらにちゃんとした考えを持っているレオを感心したように頷いた。
「それにしても、領民の奴隷も問題ですが、スケルトンのことが気になりますね……」
「というと?」
ファウストも、ムツィオ側が万に近いスケルトンを操るということを聞いて気になっていた。
何かしらの方法でスケルトンを生み出しているというのが、王国側の考えになっている。
従魔にしては多すぎるし、どうやって集めたのか気になる。
「もしかしたら……」
「んっ?」
少し考えた後、レオは何か思いついたように呟く。
何を思いついたのかは分からないが、なんとなく顏色が青くなっているようにも感じた。
「僕と似たスキルを持っている人間がいるのかもしれません」
「っ!! まさか!!」
レオの思いついた考えを聞いて、ファウストも顔を青くした。
1人で大軍勢を率いることのできるレオのスキル。
こんなとんでもないのが他にいるなんて考えたこともなかった。
しかし、そう考えるとなんとなく納得できるところがある。
魔石がない所、大軍勢を率いている所。
自分たちの考えが当たりのような気がした2人は、悪寒がして少しの間なんの言葉が思いつかない状況に陥ったのだった。
数に対抗して、王室は質で勝負するという考えに出た。
それにより、各領から実力のある戦士を徴収することになった。
騎士爵のレオの所にもその話が来たのだが、ヴェントレ島の招集書には何故かレオが指名されていた。
その理由が分からず、レオは招集書を持って来たファウストに理由を尋ねた。
「……カロージェロとイルミナートがルイゼン領にいやがった」
「っ!! 他国に逃げたんじゃなかったのですか!?」
「あぁ……」
ファウストの思わぬ答えに、レオは目を見開く。
度重なる領地の経営失敗に加え、レオに暗殺者を仕向けたことで指名手配されることになった父と兄。
てっきり、国の追っ手が来る前にどこかの国に逃げてしまったと思っていた。
それがよりにもよってルイゼン領にいるなんて思いもしなかった。
「奪還戦にその姿を現し、参加していたローデラ男爵を殺害したそうだ」
「くっ! そうですか……」
そもそも罪を犯しておいて逃げ出したこと自体国に迷惑をかけているというのに、貴族の一人を手にかけるなんてどれだけふざけた奴らなのだ。
余計なことをしないで、さっさとこちら側に捕まって欲しいものだ。
「でも、父たちが現れたからといって、なんで僕が?」
父たちが他国に逃げていなかったのは分かったが、だからといって自分が呼ばれる理由が分かった訳ではない。
自分のスキルは、フェリーラ領の領主のメルクリオの協力を得て、フェリーラ領以外に広がらないようにしている。
そのため、レオの戦闘力が知られているということはないと思われる。
なのに、招集されたのはどういうことなのだろうか。
「さあ? お前を使って誘き出そうって考えなのかもな……」
「……囮ですか?」
「かもしれないな……」
父たちが国から逃げ出そうとしたのは、レオの暗殺を失敗したことによる所もある。
もしもレオの姿を見つければ、カロージェロたちが何かしらの反応を示すかもしれない。
そのために呼び寄せたとなると、ただの囮として利用するつもりなのかもしれない。
あくまでもファウストの考えなので正解とは言い切れないが、たしかにそう考えることも出来る。
「いくらあの2人の頭がおかしいといっても、そんな手に乗るとは思いませんが?」
「……辛辣だな」
腐っていても一応は自分の父親たちのことを、レオはやんわりバカ呼ばわりする。
いつも穏やかな気性のレオがそういうのだから、相当2人のことを嫌っているのだろう。
むしろいつも穏やかな人間の方が、怒りが爆発した時の恐ろしさは上なのかもしれない。
そう感じたファウストは、戦場でレオが人形を使ってカロージェロたちをボコボコにしている映像が頭に浮かんできて、冷たい汗が背中を伝った。
「まぁ、正確な理由は分からないが、国に呼ばれた以上行くしかないだろう」
「困りましたね……」
レオとしては行きたくないが、たしかに国からの通達を断れる理由が存在しない。
そもそも、直々に指名されての招集なので、断ることなんて出来る訳がない。
断りようものなら、陛下への印象が最悪なことになりそうだ。
そうなるのだけは勘弁願いたい。
「こんな事なら強い人間を出せと言われた方が良かったかもしれないですね……」
領内の精鋭を出せと言うなら、この島には強い人間がいる。
特にガイオはかなりの強さを誇っているため、文句はないはずだ。
「……いや、どっちにしろお前が行くことになったんじゃねえか?」
「……そういえば、そうですね……」
ファウストに言われてよく考えたら、ガイオを送るのは無理だとレオは思いなおした。
ガイオをルイゼン領に送ってムツィオにその姿を見られてしまったら、エレナが生きているということがバレてしまうかもしれない。
そうなったら、王国軍相手にそんな暇はないとは思うが、ムツィオからエレナ暗殺の刺客を送られてくるかもしれない。
そんなことされるのは面倒臭いことこの上ないため、ガイオを送ることは最初から無理だった。
やっぱり、レオが行くことになっていたかもしれない。
「俺から忠告をするなら、お前の能力はなるべくなら使わないようにしろよ」
大量の人形を使った大軍勢。
それが1人の人間のスキルによって形成されているということを知ったら、最前線での戦闘をさせられることになるだろう。
しかも、それは今回だけでなく、今後何かある度に招集されることになるかもしれない。
そうなったら、レオ1人が功を得ることになり、他の貴族たちからどう思われるか分からない。
中には妬みや嫉みで、レオに八つ当たりをしてくるかもしれない。
それが少数ならまだしも、多数になったらレオの排除を仕掛けてくるかもしれない。
そうならないためにも、ファウストとしては大量の人形による戦闘を回避して欲しいところだ。
「しかし、ルイゼン領を奪還しないとエレナがいつまでも貴族に戻ることができないですし、もしもこの能力を知られた時にどうして使わなかったかと言われるかもしれないですから……」
「そうか……」
国としてはルイゼン領奪還を済ませ、内乱のようなこの状況を早々に収束したいところだ。
そのために精鋭を集めての戦闘を起こそうとしているのだ。
ここでレオが活躍すれば、エレナをルイゼン領に戻すように王に進言することも出来るようになるかもしれない。
エレナと、彼女を守ろうと島へと逃れてきた者たちも大勢いる。
もしもエレナが貴族に戻れるようになったら、彼らも一緒に島を去るかもしれない。
それでも、みんなの幸せを考えるなら仕方のないことだと思っている。
そうなったらそうなったで、レオはまた地道に島を発展させていけば良いだけだと思っている。
「それにしても、平民を奴隷にしたりスケルトンを操るなんて、ムツィオは父以上にとんでもない奴ですね……」
「全くだ」
招集に従い、レオがルイゼン領へ向かわなければならないのは分かった。
そのため、ルイゼン領の状況を聞いたレオは、またも腹を立てることになった。
領民を強制的に奴隷にして戦わせるなんて、ムツィオはどういう神経をしているのだろうか。
父のカロージェロも領民のことを考えない政策ばかりをして領地をダメにした人間だが、ムツィオはそれ以上に領民のことを考えないやり方をしている。
「領民あっての領主でしょう!」
「……そうだな」
レオは昔から受け入れた領民を大切にしてきたし、ファウストもそれを近くで見てきた。
多くの人間がヴェントレ島に移ってきて幸せに暮らしている。
ここの領民は良い領主に恵まれている。
ファウストは、若いながらにちゃんとした考えを持っているレオを感心したように頷いた。
「それにしても、領民の奴隷も問題ですが、スケルトンのことが気になりますね……」
「というと?」
ファウストも、ムツィオ側が万に近いスケルトンを操るということを聞いて気になっていた。
何かしらの方法でスケルトンを生み出しているというのが、王国側の考えになっている。
従魔にしては多すぎるし、どうやって集めたのか気になる。
「もしかしたら……」
「んっ?」
少し考えた後、レオは何か思いついたように呟く。
何を思いついたのかは分からないが、なんとなく顏色が青くなっているようにも感じた。
「僕と似たスキルを持っている人間がいるのかもしれません」
「っ!! まさか!!」
レオの思いついた考えを聞いて、ファウストも顔を青くした。
1人で大軍勢を率いることのできるレオのスキル。
こんなとんでもないのが他にいるなんて考えたこともなかった。
しかし、そう考えるとなんとなく納得できるところがある。
魔石がない所、大軍勢を率いている所。
自分たちの考えが当たりのような気がした2人は、悪寒がして少しの間なんの言葉が思いつかない状況に陥ったのだった。