「人形師団!!」
魔物や動物の骨を使用したらしきスケルトンたちに、王国兵たちは手を焼く。
放って置いたら少なくない被害が出ると感じたレオは、援護をするために自分の人形を動かすことにした。
ジェロニモが動かしているスケルトンの数に比べれば少ないが、それでも師団(2万)レベルの人形が出現する。
最初に作り出したロイを先頭に、人形たちは隊列を組むようにしてレオの前に並んだ。
「みんな! 頼んだよ!」
“コクッ!”
レオの頼みに対し、ロイが代表して頷きを返す。
そして、人形たちは動物型スケルトンたちへと向かっていった。
「……何だ? あれは……」
「……人形…でしょうか?」
離れた位置から戦況を眺めていたジェロニモとコルラード。
王国兵が動物型スケルトンに襲われているのを眺めているつもりだったが、戦場に異変が起きた。
急に人の形をしたものが出現したのだ。
王国側は何を考えているのかと、2人は首を傾げるしかなかった。
「「っ!!」」
理解不能と感じていた2人は、すぐに驚きの表情へと変化した。
大量の人形が動き出し、動物型スケルトンたちを破壊し始めたのだ。
その動きは精錬されていて、手こずっている王国兵たちに戦い方を指導するかのような戦い方をしている。
それにより、王国兵たちも冷静さを取り戻したのか、段々と人形を真似るように動物型スケルトンを破壊するようになっていった。
「何だ……? 何なんだあれはっ!?」
ジェロニモは、骨を利用したスケルトンが作り出せるとだけ父のムツィオに自分の能力を伝えていた。
スケルトンと聞いたムツィオは、人骨のスケルトンとしか思い至らなかった。
実際の所は、ジェロニモは脊椎動物なら何でもスケルトンとして使用できていた。
生まれ持っての膨大な魔力とこの能力によって、王国軍なんて恐れるに値しないと考えていたが、まさかこんなことになるとは思いもしていなかったため、信じられないといったような表情と共にジェロニモは声を荒らげた。
「……まさか! ジェロニモ様の能力に似たスキルなのでは?」
「何だと!? そんなバカな!!」
動く人形。
それを見ていたコルラードは、ジェロニモのスケルトンに重なる所を感じた。
そのため、思ったままを口にしたのだが、ジェロニモにはとても認めらない言葉だった。
エレナが生きていると知って父を殺したが、もう王国との戦いは引き返せない状態だった。
自分もきっと処刑される。
もしくは一生牢獄か奴隷生活を強いられることになる。
そうなったら、エレナと生きるということなど叶えられるはずがない。
ならば、自分の能力を使って王国を退かせればいい。
自分の能力は、エレナを手に入れるために神が与えた能力なのだと、ジェロニモは自分勝手に解釈したのだ。
しかし、そう思っているからこそ、自分に似た能力を持つ者というのが信じられない。
エレナを手に入れる能力を、神より与えられた者が他にもいるということだからだ。
「……スケルトンよりも1体の能力が違う!!」
「数よりも質ということでしょうか……?」
「くそっ!!」
同じような能力といっても、明らかに王国側の人形はスケルトンよりも強い。
魔物や動物の骨から作ったスケルトンが、成すすべなく破壊されている。
とてもジェロニモの人骨スケルトンとは動きが違った。
能力の性能の差が違うということで、ジェロニモはそのまま自分の能力が劣っているように感じて悔しさが込み上げてきた。
「俺だって能力を向上してきたはずなのに!!」
いつの間にかステータスカードに出現した能力で、最初ジェロニモは使い道が分からなかった。
ただ単純に、死体を操る能力だと判断していた。
死体を操るなど神を冒涜する能力に思え、なるべく能力を隠したまま生きた。
父からエレナが死んだと聞いた時は世界が崩れた思いになったが、もしかしたら自分の能力は死んだ人間を生き返らせることができるのではないかと思った。
もしもそれが正しければ、エレナを生き返らせることができる。
そう思って試してみたら、動かせるのが骨のみだということが分かった。
それでも能力を使い続ければという思いで、元々大量にあった魔力を使って訓練をしたが、結局動かせるのは骨の部分のみだった。
それにより、自分の能力に打ちひしがれ、ジェロニモは自分の殻に引きこもるようになったのだ。
「親父のために何体作ってきたと思っているんだ!!」
打ちひしがれたジェロニモと違い、ムツィオはその能力を欲した。
無敵のスケルトン軍団というのを思いついたようだ。
訓練によって魔力量が増えていたのも好都合だったようで、魔力を補給すれば頭部を壊されない限り動き回る兵隊の出来上がりだ。
ムツィオにスケルトン兵の増産を言われて従っていたのも、心のどこかで僅かに能力の成長を期待していたのかもしれない。
しかし、結局骨を操るだけの能力でしかないと、ジェロニモは結論付けたのだ。
「くそっ! このままでは……」
王国側の人形が、どんどん動物型のスケルトンを破壊している。
このままでは動物型スケルトンが全滅してしまう。
「コルラード!!」
「ハッ!」
魔力量に物を言わせ、ジェロニモは休戦中もスケルトンを大量に製造してきた。
しかし、このままでは王国兵を減らすことなど不可能だ。
仕方がないので、ジェロニモは次の手を出すしかなくなった。
「テスタたちが集めたのはどうなっている?」
「いつでも動かせます!」
ジェロニモの側にはまだ手はある。
その1つを使うために、ジェロニモはコルラードへ状況の確認をする。
その問いに対し、コルラードは自信ありげに返事をする。
「動かせ!」
「ハッ!」
現在の状況を打破するべく、ジェロニモはコルラードへ指示を出す。
それに対し、コルラードへは頷きを返した。
「……今度は何だ?」
動物型スケルトンの攻撃が治まる。
被害を受けはしたが、人形たちのお陰で少なく済んだ。
スケルトンドラゴンが出される前にもっと減らしておきたかった思いもあるが、完全に王国優位に進んでいる。
王国の兵たちは気力が上昇していたため、今度はこちらが攻め込むべきかと考えていた。
「…………人間?」
スケルトンたちの進軍が止んだと思ったら、今度は普通の人間が姿を現してきた。
今更普通に戦いを挑んでくるのかと、少し拍子抜けの感が否めない。
「あっ、あいつら!!」
「スパーノ! 彼らが何者か分かるのですか!?」
「え、えぇ……」
現れた人間を目にして、スパーノたちが驚きの声をあげた。
彼らが何者なのか分かれば、もしかしたら対応も楽になるかもしれない。
その反応に、隊長として率いているシュティウスが問いかける。
「あいつらはルイゼン領を拠点としていた冒険者っす」
「冒険者……?」
冒険者が戦争に参加するということはあり得ない話ではない。
いい意味でも悪い意味でも、料金と自分の実力次第で仕事を選択するのが冒険者だ。
しかし、戦争の場合負ければ何も得られないかもしれないのに、参戦するという選択をするのは信じがたい。
スパーノたちのように、世話になっている領主に頼まれたりしたのか、それともスケルトンドラゴンの出現で勝ち馬に乗ろうと考えたのだろうか。
「しかも、ほとんどB以上の高ランク冒険者っす」
「B以上!? いくらスケルトンドラゴンがいるからといっても、ここで参戦して来るとは……」
B以上の高ランクとなると、敵に回したらスケルトンなんかよりも危険な存在でしかない。
ここにきて参戦してきた冒険者たちに、王国側は慌てだした。
高ランク冒険者となると、兵の中でも隊長クラスが普通だ。
そんなのばかりを相手に戦うとなると、こちらも相当な強さの者たちを当てないと危険だ。
「隊長さん! あいつらは俺たちが相手にする!」
「えっ!? しかし……」
スパーノの提案に、シュティウスは少し躊躇う。
たしかに冒険者には冒険者ということも考えもあったが、精鋭として集めたスパーノたちはかなりの戦力だ。
ここで相打ちにでもなったら、こちらはかなりの痛手だ。
「知った人間が多い。何とか退くように促してみるよ」
「……分かった。フェリーラ伯に進言してくる」
スパーノが言うように、知り合いなら何とか退いてもらえるかもしれない。
戦うにしても、知っている相手なら何かしらの戦い方もあるだろう。
スパーノたちの自信のある表情を見たシュティウスは、指揮するメルクリオへ進言することにした。
魔物や動物の骨を使用したらしきスケルトンたちに、王国兵たちは手を焼く。
放って置いたら少なくない被害が出ると感じたレオは、援護をするために自分の人形を動かすことにした。
ジェロニモが動かしているスケルトンの数に比べれば少ないが、それでも師団(2万)レベルの人形が出現する。
最初に作り出したロイを先頭に、人形たちは隊列を組むようにしてレオの前に並んだ。
「みんな! 頼んだよ!」
“コクッ!”
レオの頼みに対し、ロイが代表して頷きを返す。
そして、人形たちは動物型スケルトンたちへと向かっていった。
「……何だ? あれは……」
「……人形…でしょうか?」
離れた位置から戦況を眺めていたジェロニモとコルラード。
王国兵が動物型スケルトンに襲われているのを眺めているつもりだったが、戦場に異変が起きた。
急に人の形をしたものが出現したのだ。
王国側は何を考えているのかと、2人は首を傾げるしかなかった。
「「っ!!」」
理解不能と感じていた2人は、すぐに驚きの表情へと変化した。
大量の人形が動き出し、動物型スケルトンたちを破壊し始めたのだ。
その動きは精錬されていて、手こずっている王国兵たちに戦い方を指導するかのような戦い方をしている。
それにより、王国兵たちも冷静さを取り戻したのか、段々と人形を真似るように動物型スケルトンを破壊するようになっていった。
「何だ……? 何なんだあれはっ!?」
ジェロニモは、骨を利用したスケルトンが作り出せるとだけ父のムツィオに自分の能力を伝えていた。
スケルトンと聞いたムツィオは、人骨のスケルトンとしか思い至らなかった。
実際の所は、ジェロニモは脊椎動物なら何でもスケルトンとして使用できていた。
生まれ持っての膨大な魔力とこの能力によって、王国軍なんて恐れるに値しないと考えていたが、まさかこんなことになるとは思いもしていなかったため、信じられないといったような表情と共にジェロニモは声を荒らげた。
「……まさか! ジェロニモ様の能力に似たスキルなのでは?」
「何だと!? そんなバカな!!」
動く人形。
それを見ていたコルラードは、ジェロニモのスケルトンに重なる所を感じた。
そのため、思ったままを口にしたのだが、ジェロニモにはとても認めらない言葉だった。
エレナが生きていると知って父を殺したが、もう王国との戦いは引き返せない状態だった。
自分もきっと処刑される。
もしくは一生牢獄か奴隷生活を強いられることになる。
そうなったら、エレナと生きるということなど叶えられるはずがない。
ならば、自分の能力を使って王国を退かせればいい。
自分の能力は、エレナを手に入れるために神が与えた能力なのだと、ジェロニモは自分勝手に解釈したのだ。
しかし、そう思っているからこそ、自分に似た能力を持つ者というのが信じられない。
エレナを手に入れる能力を、神より与えられた者が他にもいるということだからだ。
「……スケルトンよりも1体の能力が違う!!」
「数よりも質ということでしょうか……?」
「くそっ!!」
同じような能力といっても、明らかに王国側の人形はスケルトンよりも強い。
魔物や動物の骨から作ったスケルトンが、成すすべなく破壊されている。
とてもジェロニモの人骨スケルトンとは動きが違った。
能力の性能の差が違うということで、ジェロニモはそのまま自分の能力が劣っているように感じて悔しさが込み上げてきた。
「俺だって能力を向上してきたはずなのに!!」
いつの間にかステータスカードに出現した能力で、最初ジェロニモは使い道が分からなかった。
ただ単純に、死体を操る能力だと判断していた。
死体を操るなど神を冒涜する能力に思え、なるべく能力を隠したまま生きた。
父からエレナが死んだと聞いた時は世界が崩れた思いになったが、もしかしたら自分の能力は死んだ人間を生き返らせることができるのではないかと思った。
もしもそれが正しければ、エレナを生き返らせることができる。
そう思って試してみたら、動かせるのが骨のみだということが分かった。
それでも能力を使い続ければという思いで、元々大量にあった魔力を使って訓練をしたが、結局動かせるのは骨の部分のみだった。
それにより、自分の能力に打ちひしがれ、ジェロニモは自分の殻に引きこもるようになったのだ。
「親父のために何体作ってきたと思っているんだ!!」
打ちひしがれたジェロニモと違い、ムツィオはその能力を欲した。
無敵のスケルトン軍団というのを思いついたようだ。
訓練によって魔力量が増えていたのも好都合だったようで、魔力を補給すれば頭部を壊されない限り動き回る兵隊の出来上がりだ。
ムツィオにスケルトン兵の増産を言われて従っていたのも、心のどこかで僅かに能力の成長を期待していたのかもしれない。
しかし、結局骨を操るだけの能力でしかないと、ジェロニモは結論付けたのだ。
「くそっ! このままでは……」
王国側の人形が、どんどん動物型のスケルトンを破壊している。
このままでは動物型スケルトンが全滅してしまう。
「コルラード!!」
「ハッ!」
魔力量に物を言わせ、ジェロニモは休戦中もスケルトンを大量に製造してきた。
しかし、このままでは王国兵を減らすことなど不可能だ。
仕方がないので、ジェロニモは次の手を出すしかなくなった。
「テスタたちが集めたのはどうなっている?」
「いつでも動かせます!」
ジェロニモの側にはまだ手はある。
その1つを使うために、ジェロニモはコルラードへ状況の確認をする。
その問いに対し、コルラードは自信ありげに返事をする。
「動かせ!」
「ハッ!」
現在の状況を打破するべく、ジェロニモはコルラードへ指示を出す。
それに対し、コルラードへは頷きを返した。
「……今度は何だ?」
動物型スケルトンの攻撃が治まる。
被害を受けはしたが、人形たちのお陰で少なく済んだ。
スケルトンドラゴンが出される前にもっと減らしておきたかった思いもあるが、完全に王国優位に進んでいる。
王国の兵たちは気力が上昇していたため、今度はこちらが攻め込むべきかと考えていた。
「…………人間?」
スケルトンたちの進軍が止んだと思ったら、今度は普通の人間が姿を現してきた。
今更普通に戦いを挑んでくるのかと、少し拍子抜けの感が否めない。
「あっ、あいつら!!」
「スパーノ! 彼らが何者か分かるのですか!?」
「え、えぇ……」
現れた人間を目にして、スパーノたちが驚きの声をあげた。
彼らが何者なのか分かれば、もしかしたら対応も楽になるかもしれない。
その反応に、隊長として率いているシュティウスが問いかける。
「あいつらはルイゼン領を拠点としていた冒険者っす」
「冒険者……?」
冒険者が戦争に参加するということはあり得ない話ではない。
いい意味でも悪い意味でも、料金と自分の実力次第で仕事を選択するのが冒険者だ。
しかし、戦争の場合負ければ何も得られないかもしれないのに、参戦するという選択をするのは信じがたい。
スパーノたちのように、世話になっている領主に頼まれたりしたのか、それともスケルトンドラゴンの出現で勝ち馬に乗ろうと考えたのだろうか。
「しかも、ほとんどB以上の高ランク冒険者っす」
「B以上!? いくらスケルトンドラゴンがいるからといっても、ここで参戦して来るとは……」
B以上の高ランクとなると、敵に回したらスケルトンなんかよりも危険な存在でしかない。
ここにきて参戦してきた冒険者たちに、王国側は慌てだした。
高ランク冒険者となると、兵の中でも隊長クラスが普通だ。
そんなのばかりを相手に戦うとなると、こちらも相当な強さの者たちを当てないと危険だ。
「隊長さん! あいつらは俺たちが相手にする!」
「えっ!? しかし……」
スパーノの提案に、シュティウスは少し躊躇う。
たしかに冒険者には冒険者ということも考えもあったが、精鋭として集めたスパーノたちはかなりの戦力だ。
ここで相打ちにでもなったら、こちらはかなりの痛手だ。
「知った人間が多い。何とか退くように促してみるよ」
「……分かった。フェリーラ伯に進言してくる」
スパーノが言うように、知り合いなら何とか退いてもらえるかもしれない。
戦うにしても、知っている相手なら何かしらの戦い方もあるだろう。
スパーノたちの自信のある表情を見たシュティウスは、指揮するメルクリオへ進言することにした。