余命とは死ぬまでに残された日数。
その日数は誰にもわからない。数年、数十年後かもしれない。
そして、数秒後かもしれない。
僕は後悔した。
どうして1分1秒を大切にしなかったのかーーーと。
2030年代から人工知能の研究が急発展し、2100年代を迎える頃には人工知能と人間の対比は5対5となった。
2000年代に恐れられていた人工知能との戦争は起きなく、共存していた。
平等。かつて人間が望んでいた世界が実現した。
ただ、一つだけどうしても解決できないことがあった。
それは寿命。
ロボットは壊れるはおろか病気にもかからない。そのため延々に生きていける。
ロボットと人間の余命は正反対になっている。
2230年ーーー現代
製造されてから200年?が経過された。
老いることも病気になることもなく、最年長のロボットとして人間社会に溶け込んでいる。
『第一号人間型生活用ロボット』僕の名前だ。
僕を知っている人は親しみを込めて1と呼んでくれる。嬉しい限りだ。
そんな僕には最近悩みがある。それは「一日がとてもつまらなく、とても早いことだ」
製造された頃は全てが初めてのことで、楽しいことばかりだった。だが、100年が経過し初めての妻(人間)が他界した時、僕の人生はとてもつまらなくなった。
何をしても嬉しくなく、何が起きても悲しいこともなく、悲しんだ振りをする。心がなくなったようだった。
そんな僕は今、「何でも屋」の仕事をしている。
その理由は簡単で、生きている実感が欲しいからーーー
今日はその依頼人に会う日だった。
『初めまして、何でも屋の第一号人間性活用ロボットです。みんなからは1と呼ばれています』
ここのところ依頼がなかったせいで、僕は久しぶりに自分の名前を口にした。
「こちらこそはじめまして。桜庭彩と言います。彩と呼んでください」
人とロボットを判別するのは難しく外見で判別することはできないに等しくなっている。
唯一判別できる資材は名前だけ。そこまでロボットは人間に近づいていた。
『彩さん。良いお名前ですね。依頼内容をお伺いしてもよろしいですか?』
メモ用電子機器を取り出し、依頼内容を確認する。
「ありがとうございます。依頼っていうよりお願いに近いのですが……」
『大丈夫ですよ。できる限りですが協力いたします』
「私はおそらく一週間の間に死を迎えます」
彼女の言葉に驚きつつも僕はこう思ってしまった。
羨ましいーーーと。
「正直、死ぬのが怖いです。だからあなたの身体を私にくれませんか?」
一瞬思考が停止した。
ロボットは老いることもなければ死ぬこともない。つまり不老不死。
昔やってたゲームを起動するとその世界の住人は平然な顔をしている。それとおんなじだった。
だが昨今ロボットが死ねるようになった。それはロボットの身体を人間に移植することだった。
『僕は製造されてから200年が経過しました。いろいろなことがありました。最愛の妻との出会いや別れ、悲惨な事故や事件もう何が起きても心が動かなくなっています。正直、今ここで銃撃戦が繰り広げられても私は動揺しません。人は死の恐怖を感じた時に動揺する。ですが死の恐怖がない僕にはそれが日常なんです。彩さんはこんなんになりたいんですか?』
死を迎える人になんの話をしているのだろう。自分でも最低だと思う。
人間は助かる確率が一ミリもあれば、そこに身を委ねるだろう。
だからこの人の答えはもうわかっている。
「それでも……それでも私は…生きたいんです」
力強く握り拳を作る彼女。きっとやり残したことがたくさんあるんだろう。
見た目から推測するに20代?もしくは10代なのかもしれない。
今から楽しいことばかりだ。
そんな彼女の役に立てるなら、嬉しいことこの上ない。
「わかりました。ですが、一つだけ条件がありますーーー」
そして僕は200年という長くも辛い人生から解放され。
彼女に託したーーー
「気分はいかがですか?」
目を覚ますと私は真っ白の部屋の真っ白なベッドの上にいた。
身体が軽い。一瞬にして感じとれた。
今まで鉛のように重たかった身体も吐き気も死の恐怖も一切なく。絶好調。
『大丈夫です!』
笑顔で隣にいた看護師さんに伝えると。
優しく微笑んでくれた。
その微笑みは久しく感じた同情のない微笑みでとても美しかった。
二時間後
病院を出た私は一目散にあるところに向かった。
それはお墓だった。
1さんの最後のお願い。
『移植の際、妻の記憶を引き継がせてください。そして、移植が終わったら妻のメモリだけを取り出してお墓に埋めてください』
「……良いんですか?大切奥さんとの思い出なんですよね?」
『人は忘れられていく生き物なんです。それを何百年も覚えていてはいけない』
一さんに代わりお祈りをし、頭を二回連続叩きメモリを取り出そうとする。
本当に……本当にこれで良いのかな?
1さんが忘れてしまったら、もう奥さんのことは誰も覚えていないんじゃ……?
だんだんと手が震え、胸が苦しめられていく。
1さんと奥さんとの記憶が私に流れ込んでくる。
やっぱり……できないよ。
私は奥さんとの記憶と元に生きていくことを決めた。
そこから私の人生は本当に楽しくなった。
遊んで、勉強して、喧嘩して、泣いて、笑って、生きていることをひしひしと感じ、つまらないなんて一ミリも感じないぐらいの人生だった。
でも、80年が経過した頃だろうか。
少しずつ感情が薄れていくのを感じーーー
100年を迎える頃には死にたいとも思えるようになっていた。
そんな時だった。ニュースであることが取り上げられていた。
記憶のリセットができると言うニュースが飛びこんできた。
その内容は簡単で、「記憶をリセットしてもう一度人生を歩めると言うものだった」
私は何も考えずにそれに応募し、全ての記憶を消した。いつしか邪魔になっていた一さんの奥さんの記憶も。
それを何十回も繰り返した。
そしてだんだんと自分が誰なのかわからなくなっていきーーー
100回目の人生を歩んでいる。
壊れることもなく。
その日数は誰にもわからない。数年、数十年後かもしれない。
そして、数秒後かもしれない。
僕は後悔した。
どうして1分1秒を大切にしなかったのかーーーと。
2030年代から人工知能の研究が急発展し、2100年代を迎える頃には人工知能と人間の対比は5対5となった。
2000年代に恐れられていた人工知能との戦争は起きなく、共存していた。
平等。かつて人間が望んでいた世界が実現した。
ただ、一つだけどうしても解決できないことがあった。
それは寿命。
ロボットは壊れるはおろか病気にもかからない。そのため延々に生きていける。
ロボットと人間の余命は正反対になっている。
2230年ーーー現代
製造されてから200年?が経過された。
老いることも病気になることもなく、最年長のロボットとして人間社会に溶け込んでいる。
『第一号人間型生活用ロボット』僕の名前だ。
僕を知っている人は親しみを込めて1と呼んでくれる。嬉しい限りだ。
そんな僕には最近悩みがある。それは「一日がとてもつまらなく、とても早いことだ」
製造された頃は全てが初めてのことで、楽しいことばかりだった。だが、100年が経過し初めての妻(人間)が他界した時、僕の人生はとてもつまらなくなった。
何をしても嬉しくなく、何が起きても悲しいこともなく、悲しんだ振りをする。心がなくなったようだった。
そんな僕は今、「何でも屋」の仕事をしている。
その理由は簡単で、生きている実感が欲しいからーーー
今日はその依頼人に会う日だった。
『初めまして、何でも屋の第一号人間性活用ロボットです。みんなからは1と呼ばれています』
ここのところ依頼がなかったせいで、僕は久しぶりに自分の名前を口にした。
「こちらこそはじめまして。桜庭彩と言います。彩と呼んでください」
人とロボットを判別するのは難しく外見で判別することはできないに等しくなっている。
唯一判別できる資材は名前だけ。そこまでロボットは人間に近づいていた。
『彩さん。良いお名前ですね。依頼内容をお伺いしてもよろしいですか?』
メモ用電子機器を取り出し、依頼内容を確認する。
「ありがとうございます。依頼っていうよりお願いに近いのですが……」
『大丈夫ですよ。できる限りですが協力いたします』
「私はおそらく一週間の間に死を迎えます」
彼女の言葉に驚きつつも僕はこう思ってしまった。
羨ましいーーーと。
「正直、死ぬのが怖いです。だからあなたの身体を私にくれませんか?」
一瞬思考が停止した。
ロボットは老いることもなければ死ぬこともない。つまり不老不死。
昔やってたゲームを起動するとその世界の住人は平然な顔をしている。それとおんなじだった。
だが昨今ロボットが死ねるようになった。それはロボットの身体を人間に移植することだった。
『僕は製造されてから200年が経過しました。いろいろなことがありました。最愛の妻との出会いや別れ、悲惨な事故や事件もう何が起きても心が動かなくなっています。正直、今ここで銃撃戦が繰り広げられても私は動揺しません。人は死の恐怖を感じた時に動揺する。ですが死の恐怖がない僕にはそれが日常なんです。彩さんはこんなんになりたいんですか?』
死を迎える人になんの話をしているのだろう。自分でも最低だと思う。
人間は助かる確率が一ミリもあれば、そこに身を委ねるだろう。
だからこの人の答えはもうわかっている。
「それでも……それでも私は…生きたいんです」
力強く握り拳を作る彼女。きっとやり残したことがたくさんあるんだろう。
見た目から推測するに20代?もしくは10代なのかもしれない。
今から楽しいことばかりだ。
そんな彼女の役に立てるなら、嬉しいことこの上ない。
「わかりました。ですが、一つだけ条件がありますーーー」
そして僕は200年という長くも辛い人生から解放され。
彼女に託したーーー
「気分はいかがですか?」
目を覚ますと私は真っ白の部屋の真っ白なベッドの上にいた。
身体が軽い。一瞬にして感じとれた。
今まで鉛のように重たかった身体も吐き気も死の恐怖も一切なく。絶好調。
『大丈夫です!』
笑顔で隣にいた看護師さんに伝えると。
優しく微笑んでくれた。
その微笑みは久しく感じた同情のない微笑みでとても美しかった。
二時間後
病院を出た私は一目散にあるところに向かった。
それはお墓だった。
1さんの最後のお願い。
『移植の際、妻の記憶を引き継がせてください。そして、移植が終わったら妻のメモリだけを取り出してお墓に埋めてください』
「……良いんですか?大切奥さんとの思い出なんですよね?」
『人は忘れられていく生き物なんです。それを何百年も覚えていてはいけない』
一さんに代わりお祈りをし、頭を二回連続叩きメモリを取り出そうとする。
本当に……本当にこれで良いのかな?
1さんが忘れてしまったら、もう奥さんのことは誰も覚えていないんじゃ……?
だんだんと手が震え、胸が苦しめられていく。
1さんと奥さんとの記憶が私に流れ込んでくる。
やっぱり……できないよ。
私は奥さんとの記憶と元に生きていくことを決めた。
そこから私の人生は本当に楽しくなった。
遊んで、勉強して、喧嘩して、泣いて、笑って、生きていることをひしひしと感じ、つまらないなんて一ミリも感じないぐらいの人生だった。
でも、80年が経過した頃だろうか。
少しずつ感情が薄れていくのを感じーーー
100年を迎える頃には死にたいとも思えるようになっていた。
そんな時だった。ニュースであることが取り上げられていた。
記憶のリセットができると言うニュースが飛びこんできた。
その内容は簡単で、「記憶をリセットしてもう一度人生を歩めると言うものだった」
私は何も考えずにそれに応募し、全ての記憶を消した。いつしか邪魔になっていた一さんの奥さんの記憶も。
それを何十回も繰り返した。
そしてだんだんと自分が誰なのかわからなくなっていきーーー
100回目の人生を歩んでいる。
壊れることもなく。