誰とも会わなかったことが不思議だったけれど特に気にすることなく教室へ向かうことにする。
「おはよう!」そう言いながら勢いよく扉を開けて入ったところクラスメイト全員から挨拶されたのでびっくりしたものの俺もそれに答えたところで違和感を覚えてしまう。
何故なら昨日までの彼らならこんな反応はしなかったからである。
(何故なんだ?何かあったのか……?)

「何か嬉しい事でも?」
あの女生徒に声をかけられた。
「ここの生徒だったのかよ」
「ずっとよ。おかしな人」
「マジかよ」
追及は授業開始の声に阻まれた。
その後もどっちつかずの態度をされて欲求不満が爆発した。
「いつまで続けるんだよ」
「あはは、どういう意味?」
「ふざけんな! 媚びられても迷惑なんだよ!」
彼女はうつむいたがすぐに大笑いした。
リアクションに困る。そして押し切られる形で関わることになった。
その日の寝入りばなに彼女が来た。
「こんばんは♡夜這いに来たわ♡」そう言って微笑む彼女の姿を見た俺は呆れながら言う。
「しつこいな。萎えるわ」
「そんなの関係ない」
このままじゃ襲われる。
そう思った瞬間、彼女は気絶した。
そう思った瞬間彼女は突然動きを止めるとその場に倒れ込んだのだ。
一体何が起こったのか分からなかった俺は恐る恐る声を掛けるが返事は返ってこなかった……代わりに聞こえてきたのはすすり泣く声だったのだがその理由はすぐに判明した……なんと死んでいたのである……しかもその顔は幸せそうな笑顔を浮かべていたのだ……それを見てしまった俺はショックを受けると共に吐き気に襲われてしまいトイレまで走るとその中を覗くようにして嘔吐した……しばらくして落ち着いてきた頃にふと我に返ると今度は寒気を覚えてしまう……それはそうだろう……目の前で人が一人死んでいるのだから冷静でいられる方がおかしいというものである。
思い直して部屋に戻ると空虚に押しつぶされた。無意味な捜索活動をした。
そして奇跡的な再開をした。ありえない。
彼女の姿をした夢魔に襲われて裸足で逃げ出した。
そんな思いも虚しく結局一晩中続けられた結果、翌朝には『女子高生』は『女』になっていたのである。
そして翌日から少女を目にした者は誰一人いない。
その晩、少年が家に帰ってくるなり「どうするんだよ」と声をかけてきたが、「何が?」と少年は聞き返すと、
「何って、お前……。
……あの子の目、見た事あるのかよ? あいつの目は違うぞ。
あれはな、俺らとは違うんだよ。
大人なんだ」
少女は聞いていて、「……違うって何が違うの?」と言うと、別の少女が答える。
「だって、……あの子って、時々凄く大人びて見える時があるし……。
ほらっ!なんかさぁ……なんて言ったら良いのか分かんないんだけど、何か、……ね!」別の子が言っていて、もう一人の女子生徒が、
「え~!?」と言い、「それにしても、あいつ、また今日もいないな。
……あいつの家って、結構大変なんかな」と言った言葉を聞いた瞬間、少女の顔色が変わった。
少女は教室から出て行き、階段を上る。
三階に行く途中、足を止めずにそのまま四階に上がり、階段近くの扉から外に出た。
そして、校舎の裏にある焼却炉まで歩いて行くと、少女は足を止めた。
そこには、一人の少年が座っていたからだ。
少女に気付いた少年は立ち上がり、「……あ、こんにちは。
……えっと……」と言うと、少女は何かを言いかけようとして口を開きかけた時、友人に呼ばれた少年はその場を離れてしまう。
教室から見える中庭に、一人の女生徒が見えた。
(ああいう人もいるし……。
きっと大丈夫)少女はその女生徒に目を向けていたが、すぐに視線を戻した。
午後の授業が終わり、少女が帰りの準備をしていると、「ねぇ、ちょっと」と声をかけられる。
振り向くとそこには女子生徒がいた。
彼女は先日一緒に食事をした友人の一人だ。
少女は彼女と一緒に教室を出た。
そして、近くのファミレスに入って、向かい合うように座ると、彼女が話しかけてくる。
「ねぇ、あの時言った事、嘘だったの?」と聞いてくるので、自分は首を振る。
彼女は続ける。
「じゃあ何で?」……どうすれば良かったのか分からないからです、とは答えられない。
彼女は言葉を続ける。
「あなたが何を思ってるのか、正直言って、私には全然分からない」……分かってほしいと思ったことはない。
自分だって、人の考えている事が全部分かるわけではないのだ。
それに、自分が思っている事なんて、きっと誰にも分からないだろう。
だから自分は黙っていたのだが、それを伝える方法も、分からなかった。
ただ、自分が彼女を傷つけてしまった事は分かった。
だから謝ろうと思って口を開いたが、何も言えなかった。
「……何が言いたいの?」……ごめんなさい。
「それで、許してくれるとでも思ったの?」……はい。
「ふざけないでよ」……本当に、すみませんでした。
「何でよ」
……もう、分かりません。
「ふざけんなよ」……本当に、申し訳ありませんでした。
「何なのよ」……自分でもよく分かりません。
「意味わかんない」……そうですね。
「あんたのせいよ」……そうかもしれません。
「ふざけんなよ」……はい。
「何なのよ」……
「もういい」……
「ふざけんなよ」……
「いい加減にしてよ」……
「うるさいんだよ」……
「いい加減にしろよ」……
「お前のせいで」
……
「死ねよ」……
「あんたなんか死ねばいいのよ」………………。
…………私、死にます。
そう言って席を立った彼女を、彼は呼び止めなかった。
それから一週間程して、彼女は死んだ。
遺書には、こう書かれていたそうだ。
「私は最低の人間です。
私は友達を殺しました。
私は自殺します。
今までありがとうございました」
この話をしてくれた人の名前は知らない。
というか、誰も知らなかった。
何故ならそ