と言うと、急に口を閉ざした彼に女子生徒が尋ねた。
「他に何かあるの?」
「あぁ~そうだなぁ……あ!そう言えば、その親戚のお婆さんが死んでるって話もあったよな」彼の言葉を聞き、一人が言った。
「ねぇ、それ絶対嘘でしょ?あんた騙されてるよ……」と他の生徒も同意し始めた時、チャイムが鳴った。
着席する際に呼び止められた。
恩返しを提案されたが照れ笑いで軽く流した。
彼女の方は少しの間見つめていたようだが、チャイムが鳴り始めると、急いで席に着いた。
昼休みになるといつものように娘は食堂へ向かった。
いつもは弁当なのだが、この日だけは、昼食代を渡されていたのだ。
と言っても、三千円も渡されたのだが。
(これじゃあお弁当作れないじゃない)と思い、娘は思ったことを呟いたが、直ぐにやめた。
娘は財布の中を確認しながら歩いていると誰かにぶつかってしまった。
顔を上げるとそこには今朝見た顔が……。
(どうしよう……)と思っているうちに向こうから話しかけてきた。
「すみません……」
と言われてしまい、少し驚きながらも謝る娘に彼は更に謝った。
そして彼は娘の持っていた財布を見て言った。
「あっ!すみません!!僕のせいですね!!」と言いながら、彼の手が伸びるのを見た娘はとっさに身構えたが、その手は彼の頭の上に乗せられた。
キョトンとする娘に対し、笑いながら彼が言う。
「あははっ!大丈夫ですよ。
お金を取って食べようなんて思っていませんから」そう言われた瞬間、安心と共に恥ずかしさを感じた娘の顔は赤く染まった。
それを見た彼は慌てて謝りながら言った。
「ごめんなさいね!別にそういうつもりでは無かったんですけど、……あの……すみませんでした」
頭を下げる彼を前にした娘は慌てるばかりでどうしていいのか分からなかったため咄嗟に口走ってしまった。
「べ、別に大丈夫です!」そう言った瞬間だった。
彼の頭がゆっくりと上がるのを見て、ホッとしていた娘の視界にある物が映った途端固まってしまう。
なんと彼の頭にあった手が動き出し始めようとしていたからだ。
(まずいわ!このままだと叩かれる!)そう思い目を閉じるも一向に痛みがやって来ない。
不思議に思い目を開けるとそこには手が止められている姿があった。
驚いて見てみると、いつの間にか横にいる男性の手が止めていたのだった。
「何をしているんですか?」と聞いた彼に男が言う。
「何って、この子の頭を触ろうとしただけだよ?何か問題があるかい?」と返す男に娘が話しかける。
「あ、あの!私は気にしていませんので!頭をあげてください!!」と言った娘に対し男は手を放し言った。
「すまないねお嬢さん方。
ではまた今度会った時にでも」そう言って去って行ってしまった男の後ろ姿を見ていると不意に名前を呼ばれる。
呼ばれた方へ振り向くと先程止めた男性がいた。
「無事でよかった」と彼は喜ぶが目つきは厳しかった。
その様子に恐怖を覚えた娘は思わず後退りしてしまったが男性はそれを見てさらに微笑むと娘に話し掛けてきた。
「ねぇ君名前はなんて言うんだい?良かったら一緒にお昼食べない?」と言う男性の誘いに対して断る理由もなく娘は了承したのだが次の瞬間驚くことになった。
何とその男は娘を連れて歩き出すと人気のない場所へ連れて行ったのである。
何故こんな事になったのか分からないまま娘は怯えていると突然背後から抱きつかれたのだ。
手で口を塞がれ襲われる寸前で人の声がした。
その声に反応した娘は思わず振り返ってしまうとそこには先程の男性が立っていたのだ。
「こんなところで何をしてるんですか?」と言う質問に対して男性はこう答えたらしい。
「いや〜可愛い子を見つけたんでちょっとお茶しないかなぁと思って声を掛けたんだけど断られちゃってさ~」と言って笑う男性だったがそれを遮って今度は私が口を開いた。
「それって私のことですか?」それを聞いた男性は一瞬驚いていたがすぐに笑顔に戻るとこう言ったのだ。
「そうだよ♪どう?僕とお茶しない?」と言われた私は思わず首を横に振ってしまったのだが、この行動によって事態が悪化してしまった事は言うまでもないだろう。
「何で駄目なんだい?」と聞かれた私は正直に答えた。
「だって知らない人と一緒に行くだなんて嫌ですから」と答えた私に怒ったらしいその人は私の腕を強引に引っ張ると歩き出したのだ。
そして連れて来られたのは人気の無い路地裏だったのだが、そこで私を地面に押し倒すと服を脱がそうとしてきた。
「やめて下さい!」と言ったものの聞いてくれずとうとう下着だけになってしまった私を見た男の人は言った。
「大丈夫だって♪優しくしてあげるからさ♪」
強引な態度が怖い。こんな学校、辞めてやる。
「さようなら……」
登校する振りをして河原に向かった。もう辞めるし。
翌日、担任に事情を話した。
「方針は決まったのか?」
返答に窮して早退した。近所のスーパーに逃げ込む。
それを繰り返し時には万引きを疑われた。
事務室に連行され冤罪を訴えても通じず困っていた私を例の男子生徒が救った。
男子生徒達は私を助けてくれただけでなく犯人扱いされたことに腹を立てたのか、その人達を追い払ってくれただけではなく警察を呼ぶように言ってくれたおかげで助かったのだが、男子生徒達が帰って行った後、
「ありがとう……」と言うと、一人の生徒が、人助けは当然だと言った。
舞い上がった私は食事をおごることにした。
「おーい!早くしろよー!」遠くから呼ぶ声が聞こえる中、僕は声の主に向かって叫び返した。
「待ってよー!今行くよー!」すると向こうの方から声が聞こえてきた。
「全く遅いぞお前!!何やってんだよ!?」と言っている彼に対して僕は言い訳をするように言った。
「しょうがないじゃんか~!急に呼び出したのはそっちでしょ!?それなのにこんなに待たせるなんて酷いよ~!」そんな僕の言葉に呆れているのか大きな溜め息が聞こえたかと思うと、彼が言ってきた。
「はぁ~まぁ