好きな作家の方の本が映画化するらしい。

 10代女子に1番人気と言われている作家さんで、個人的にはそうやって言われるよりも前から推していたと思う。

 シーン毎に毎回違った描写がされていて、想像するだけでも美しい光景に心が惹かれた。

 映画自体はまだ半年ほど先だけれど、情報はもう公開されている。

 すぐに情報を仕入れられる様にSNSを始めてみたけれど、見る専門のアカウントだから、特に何も投稿もしていない。

 とりあえず作家の方と映画情報を明かすアカウントをフォローしておいた。

 いいねを押して流してを繰り返して画面を消す。

 1日30分の利用時間制限は多めに残しておかないともしもの時に困るから大変だ。


 *


 「杉中さんはここのスライドと発表の担当だから、ここ任せてもいいかな?」


 各班で各々の気になったことをノージャンルで研究し、発表するという授業。

 いつも通り4人班で発表すれば、周りの子たちは頭が良くておとなしい人たちだけだったから良かったものを、先生が「今回はいつもの違ったやり方で」なんていうから嫌な予感がした。

 案の定、班ごとに1から4の数字を割り振り、他の班の同じ数字の子3人と班になるという方法になってしまった。

 そして運が悪いのか、神様が仕組んだのかわからないが、班員はとてもいいとはいえなかった。

 私、杉中さん、そして滝采琥珀の3人。

 杉中さんは自分勝手な面が強く、自分のやりたくないことは嫌だと言ってやらないタイプ。

 滝采はマイペースで周りがどう思っているかなんか気にせず彼も自分のやりたいことをやっているイメージがある。

 杉中さんは去年のクラスが同じだった上、まだ難関大学もぼやけて考えていた私は結構話をしていた。

 しかし、波長が絶妙に合っておらず今のような関係になっている。

 そして今、杉中さんはお得意の自分勝手を発動して、私が何を頼んでも面倒くさいと言って何もしてくれない。

 何もせずにいて気まずくないの?


 「菜那今日なんか雰囲気違うくない?」

 「なにそれ? 何にも変えてないけど」

 「えー! うっそだー!」

 「ほんとだって。毎日なんか変えるとかめんどくさいし。毎日髪型変えてる華のこと馬鹿なのって思うし」

 「あははっ、やっぱ菜那最強だわ」


 それなのに、私よりも友達は多くて、毒舌なのにみんなに好かれてて、私はどれだけ他人に好かれようとしても誰かから一番好かれることなんかなかったのに、杉中さんはいとも簡単に手に入れれて。

 なんかやだな。


 「はい。そんな今日のかわいい菜那ピース」

 「それまた上げるの?」

 「まぁね」


 SNSに投稿なんか、なんのためになるんだろう。

 自分の顔を偽って、周りの迷惑も省みず写真を撮る。

 個人情報だっていつ漏れるかわからないのに。

 ふと自分のSNSのアカウントを開く。

 私が投稿したってどうせ誰も見ないよね。


 [自分がどれだけ努力したって友達に好かれないのに、自分勝手で自己中心的な子は好かれる現象なに?]


 気がつけば、SNSに投稿していた。