駅に着くと、未亜が「このあと、約束があるんだ」と言った。
「じゃあ、ここでお別れかな。今まで、ありがとう」
お礼を言って手を差し出すと、未亜が笑いながら、おれの手をぎゅっと握った。
「こちらこそ、ありがとう」
未亜の柔らかく滑らかな手が、ゆっくりと離れていく。
明日からはしばらく、未亜に会うこともないんだな。ダブルデートのあとに電話して、隼人の話で笑い合うこともない。
未亜の隣は案外居心地がよかったから、少し淋しいような気がした。
「じゃあ……」
名残惜しい気持ちのまま手を振って、改札のほうに歩き出したとき。
「ちょっと待って、吏玖くん!」
未亜がおれの背中を呼び止めた。振り向くと、未亜が腕にかけていた紙袋からなにかを取り出した。
「吏玖くん、これ……」
未亜がおれに渡してきたのは、一輪の赤い花。一瞬、学校から卒業生に一本ずつ渡された花を差し出されたのかと思ったけど、よく見ると違った。
「これ、吏玖くんにあげる」
花の名前には疎いけど、未亜が差し出してきたその花の名前は知っている。でも、どうしてこんな可愛い花をおれなんかに……。
「じゃあ、ここでお別れかな。今まで、ありがとう」
お礼を言って手を差し出すと、未亜が笑いながら、おれの手をぎゅっと握った。
「こちらこそ、ありがとう」
未亜の柔らかく滑らかな手が、ゆっくりと離れていく。
明日からはしばらく、未亜に会うこともないんだな。ダブルデートのあとに電話して、隼人の話で笑い合うこともない。
未亜の隣は案外居心地がよかったから、少し淋しいような気がした。
「じゃあ……」
名残惜しい気持ちのまま手を振って、改札のほうに歩き出したとき。
「ちょっと待って、吏玖くん!」
未亜がおれの背中を呼び止めた。振り向くと、未亜が腕にかけていた紙袋からなにかを取り出した。
「吏玖くん、これ……」
未亜がおれに渡してきたのは、一輪の赤い花。一瞬、学校から卒業生に一本ずつ渡された花を差し出されたのかと思ったけど、よく見ると違った。
「これ、吏玖くんにあげる」
花の名前には疎いけど、未亜が差し出してきたその花の名前は知っている。でも、どうしてこんな可愛い花をおれなんかに……。