「よかったね、伝えられて。吏玖くん、すごくスッキリした顔してる」
別れ際の隼人の顔をぼんやり思い出していると、未亜が複雑そうな表情でおれを見てきた。
「未亜はしないの? 告白」
「あたしは、告白はしないよ」
おれの問いかけに、未亜がきっぱりと首を横に振る。
「なんで?」
「あたしはべつに、好きな人に気持ちを知ってほしいわけじゃないんだ。見守ることも、愛かなって思ってるから」
「ふうん……」
隼人はいいやつだから、未亜の告白だって優しく受け止めてくれると思う。だけど、未亜に伝える気がないなら仕方がない。
東京の大学に行くおれとは違い、未亜は地元に残る。隼人と灯里も地元の大学に進学が決まっている。
大学生になっても隼人や灯里に会う可能性の高い未亜は、おれほどは思い切れないのかもしれない。
大学に行けば、おれも未亜も隼人への気持ちを隠してそばにいる必要がなくなる。だから、おれは思いきって隼人に気持ちを伝えたし、未亜との偽物の恋人関係も、高校を卒業する今日でおしまいだ。