◇
『あたしと付き合えば、吏玖くんはもっと、隼人と一緒にいられるよ』
未亜が言ったその言葉は、あながち間違いではなかったと思う。
おれと未亜が付き合うことにしたと報告すると、隼人と灯里はまるで自分たちのことみたいに喜んで。それ以来、「ダブルデート」と称して、四人で遊びに行く機会が増えた。
おれと未亜とは、高校を卒業するまでの偽の恋人。おれたちのことを純粋に喜んでくれた隼人たちをだますようで気が引けたけど、それも最初の頃だけで、日を追うごとに未亜の偽彼氏を演じることに慣れていった。
学校帰りのカラオケ、ファミレス、ゲームセンター。週末の遊園地や映画館。
おれの立場はあくまで、未亜の彼氏だけれど。そういう場所に、隼人と一緒に出かけられるのは楽しかった。
灯里の手前、あからさまに隼人を独占したりはできないけれど、未亜も四人で出かけるのが楽しそうだった。
隼人たちと四人で遊んだ日の夜は、おれと未亜はたいてい家に帰ってから電話で話をした。
別れたあとも声を聞きたいからとか、淋しいからとか。ふつうの恋人同士が電話をし合うような理由ではなくて、隼人たちの前では言えないことを伝え合うため。
未亜との電話で彼女が口にする話題は、隼人のことが多かった。