『吏玖くんてさ、好きでしょう。隼人のこと』
未亜のひとことが、おれの心臓を鷲掴みにして乱暴に揺さぶった。
「おれと隼人はふつーに友達だよ」
ざわつく胸を落ち着かせるようにそう言うと、未亜がほっぺたをつぶした顔を隼人のほうに向けた。
「友達を好きになったらだめなんて決まりはないよ。それに、見てたからわかる。隼人、かっこいいからね」
わかるって、なんだ。人の話も聞かずにおれが隼人を好きだと決めかかってくる未亜にイラッとする。
横目にじろっと未亜を睨むと、彼女が思わずドキリとするほど優しい目をして隼人のことを見つめていた。
未亜は灯里の親友で、隼人とは小学校時代からの幼なじみだ。
幼なじみと親友が、付き合いだした。
考えてみるとそれは、おれだけでなく、未亜にとってもあてはまる事実だった。
もしかして未亜は隼人のこと——。
「お前も好きなの?」
隼人のことをちらっと見ながら訊ねると、未亜が振り向いて曖昧に笑った。
「もってことは、吏玖くん、やっぱりそうなんだね」
「は? おれは違う……!」
「いいよ~、強がらなくて」
ふふっと笑う未亜は、相変わらず勝手な決めつけをしてくる。そのくせ、自分の気持ちは明言しない。
「強がってるとかじゃないから」
イラッとした声で答えたおれに、未亜がトンッと肩をぶつけてきた。