「チューリップ……?」

 首を傾げながらつぶやくと、未亜が目を細めて口角を引き上げた。

「餞別に。東京の大学でも頑張って」

 餞別……、か。

「ありがとう。未亜も、大学楽しんで」
「うん……。バイバイ……」

 未亜が少しせつなげな目でおれを見つめながら、名残惜しそうに小さく手を振る。

「バイバイ」

 いつもは何気なく交わしてきた言葉だけど、今日は少し意味合いが違う。未亜との今日の「バイバイ」は、明日以降の未来にはつながらない。

 餞別のチューリップを、未亜に向かってふわりとやさしく揺らす。

 そうやって、少しせつなく、あっさりと自然に、おれと未亜の関係は終わった。