淡い色の冬の陽光が、教室の窓際で戯れ合うふたりを柔らかく包む。

 白のセーターの上に肩幅のサイズ感も袖の長さも合っていない借り物のジャージを羽織って、隣の男を上目遣いに見つめる幼なじみ。その顔は、今まで見てきた彼女のどんな表情とも違う。

 綺麗、かわいい、おとなっぽい――、彼女に対して抱く感想としてちょうどいいのは、そういう肯定的なものではなくて、むしろ……。

 窓際のふたりを見つめたまま目を眇めた、そのとき。不意に、視界を遮られた。

「おはよう、吏玖(りく)くん。ハッピー・バレンタイン」

 明るい声とともに、机の上に、ポップなイチゴ柄のパッケージのチョコレートの箱がぽとんと落とされる。いちおう言っておくと、バレンタインデーは二日前に終わった。仮に二日遅れで義理チョコを提供してくれているんだとしても、渡し方が雑すぎる。

 眉間を寄せつつ視線をあげると、クラスメートの石野(いしの) 未亜(みあ)がにこっと脳天気に笑いかけてきた。未亜は、おれの幼なじみの親友だ。それで、たまに絡まれるけど、特に親しいわけじゃない。

「どうも……」

 机に横倒しになったチョコレートの箱をちらっと見ておざなりにお礼を言うと、未亜が大きな目をわずかに見開いて、パチパチと数回まばたきする。それから、近くにあった誰かの椅子を無遠慮に引っ張ってくると、おれの隣に並べて座った。

 おれの机に頬杖をついた未亜が、どこかを見つめながら「なるほど」とつぶやく。

 なんだ、こいつ。

 未亜の意味不明な行動に若干引いていると、彼女が両手でほっぺたを少しつぶした変な顔で、おれのほうを向いてきた。