涙が少しおさまったあとも、山吹さんはあたしの頭を撫で続けてくれた。
それが心地よくて、あたしも何も言わずに黙って撫でられていた。
でも、山吹さんはあたしが少し落ち着いたことを察するとあたしの頭から手を離してしまった。
_もう少し、撫でて欲しかったのに。
そんな気持ちが湧き出てきて、あたしは自分で驚きながら赤面した。
何そんなこと思っちゃってんだあたし。
気まずくて恥ずかしくて、黙っていると山吹さんはゆっくり口をひらいた。
「_ごめん、急に撫でちゃって・・・」
恥ずかしそうに言う山吹さん。
あたしは、そんな山吹さんが何故だか無性に可愛く見えた。
山吹さんを食い入るように見つめていると、あたしの視線に気づいたのか恥ずかしそうに笑う。
「あはは、そんな見ないでよ、照れる」
眉を八の字にさせてそう言う山吹さんは少し楽しそうに見えた。
山吹さんって、案外かわいい?
そんな気持ちで山吹さんを見ながら、気づけばあたしの口の端は上がっていた。
_山吹さんってば、不思議な人。
あたしはそんな「不思議な山吹さん」に、微笑みながら口を開く。
「_あはは、そんなに見ちゃってごめんなさい、あと_」
_撫でるのなんて、全然いいですよ。
そんな言葉が頭に浮かんで、あたしは恥ずかしさのあまり言葉が詰まる。
言えない。これだけは絶対に。
あたしはそんな気持ちを隠して、何か別の言葉を探そうとした。
探している間見つけた言葉は、すごく恥ずかしくて、でも本当に伝えたい言葉。
あたしの、本音。
「_山吹さん」
そう一言言って、山吹さんを見つめ返した。
たしは少し微笑んで自分が出せる最大限の優しい声でこういう。
「あたしを_あたしを、こんなに楽しくさせてくれてありがとうございます」
それを言うと、山吹さんは目を見開いた。
恥ずかしさが上がってくるも、言ってしまった後だ。
もう後には戻れない。
すると、山吹さんは嬉しそうに、子供みたいに笑って、あたしの頭をまた撫でた。
何も言わなかったけど、わかる。
_ねえ山吹さん。
あたしは心の中で呼びかけた。
そして、山吹さんを見つめる。
山吹さんも、あたしを見つめ返してくれる。
あたしたちは、今日出会ったばっかだけど_
「_すごく、気が合いますね」
そう言って、笑いかけた。
山吹さんは一瞬固まったけど、やっぱりあの笑みで笑ってくれて。
満面の笑みでこう言ってくれた。
「うん!だね!」
って。