冬休みが開けて少し経ってから、俺にはチェロの講師が付いた。
弓の持ち方、左手の位置、楽譜の読み方、もう一度確認し直した。
予想通りだが、チェロにもう7年も触ってないので、ほとんどよく覚えていない。
ただ、ほんの少し感覚的に覚えている部分もあった。
それだけで結構講師には褒められたけども。
不幸中の幸いは、覚えていなかったものも、教えてもらえれば蘇ってきたということ。
自分の脳に感謝した。
毎日部活が終わったら、そのまま講師さんの元へ行く。
そこから3時間みっちりチェロに触って、帰ってから夕飯まで勉強。
生憎頭がいい方ではなく、英語は特に苦手だった。
今まで以上に、英単語を頭に叩き込み、時々英訳の本を開いては文を読んでみる。
それは真昼も同じで1からフランス語を叩き込んでいた。
夜空はと言うと元父から「言語は留学に置いて大切!」と幼い頃から英仏を習っていたので、隠れトリリンガルである。
だが、夜空が行きたいのはオーストリア、公用語はドイツ語だ。
結果的に1から勉強することになったようだ。
「qu'est-ce qu'il y a pour le dîner aujourd'hui.(今日の夕飯何?)」
「Acqua pazza et salade.(アクアパッツァとサラダよ。)」
「Oh, it smells good. It looks delicious.(おぉ、いい匂いするな。美味そ。)」
「Thank you. I made it for the first time, so what do you think?(ありがとう。初めて作ったから、どうかしら?)」
こうやって夜空に手伝ってもらいながら、少しずつ覚えてく。
「美味い。」
「うんうん!この味好きだなぁ。」
「Es war gut.(それは良かったわ。)」