卓球は俺らにとっちゃ旅行の定番。

 誰も経験者がいないから、いい感じに試合ができるのだ。

 ときに泥試合になるが…

「夜空、初めてじゃね?」
「そうね、体育で触ったことがあるくらい。」

 夜空は今まで未参加だった。

 軽く教えてからやってみることに。

「きゃ!うう…結構難しいわ。」
「慣れだな。頑張れ!」

 慣れない夜空はなかなか点が入らなかった。

 わけではなかった。

 苦手だと思いたかった。

「あら?朝日、卓球苦手かしら?」
「煽るな、くそ…」

 実際はこう。

 俺は彼女に歯が立たなかった。

 これで「やったことがない」と言われても説得力がない。

「おま…要領良すぎにも程がなぁ?」
「何言ってるのよ。ラケットの向きと回転で変わるのよ?簡単じゃない。」
「こいつ…」

 流石と言うべきか、夜空は飲み込みが早かった。

 結果、ボロボロに負けた。

 12対3って、言葉も出ない。

「いっぱい汗掻いたわ。あぁ楽しかった!」
「そりゃ良かったよ。」

 ほんと、何も敵わないな。

「今って…え!もう5時半なの?」
「早いな。バイキングが七時かららしいから、あと1時間半…」
「そうね…お風呂、入らない?」

 汗も掻いたことだし、丁度いいが…

(一人だよな?!まさか、なぁ?)

 一人勝手な妄想を繰り広げていると、爆弾が落とされた。

「一緒に入る///?」
「は、はぁぁぁぁ////!!?あ、あのな、俺らはまだ高校せ」

 違う、俺らはもう高校生じゃない。

 もう成人した大人なのだ。

「……っ///…お、お願い、します…///」