懐かしい文章に、少しだけ心が踊ってしまった。きっと彼女だ。そう確信したのは、彼女の癖のある文章。

 急に僕の目の前から消えた、物語のような儚い青春時代が頭の中に蘇る。逆ナンのような出会いに最初は怪訝に思った。それでも、彼女が僕の横にいるのがいつのまにか当たり前になっていた高校時代。

 そして、急に何も言わずに僕を避け出した。今でも忘れられない人。つい、嬉しくなってフォローの文字を無意識に押してしまっていた。

『はじめまして。菊といいます。知り合いに似ていて、ついフォローしてしまいました』

 そう送ってから、しまったと顔を歪める。急に消えたのにはきっと理由がある。僕のことが嫌いになったとか、僕ともう関わりたくないとか。

 僕一人だけが浮き足立って、彼女との縁をまた繋ごうとしている。きっと、そう。それなのに、文章を打つ手を止められなかった。君にまた、会うために僕は今も物語を描き続けている。

 君が大好きだと言ってくれた、言葉を紡いでいる。

 ぽんっと軽い音と共に送られてきた返信は、やっぱり彼女らしい返信で。

『はじめまして! 私の知ってるお名前でちょっとドッキリとしました笑』

 会いたい。その気持ちを抑えきれず、DMを送る。

『分かりませんか』

 その一言になんて来るだろう。彼女の気持ちがまだ、僕に合ったらきっと僕だとわかってくれる。そんな確信が心の奥に残っていた。

 このまま、またあの青春の続きをやり直すなんて淡い夢物語を頭に浮かべながら。彼女の返信を待ち侘びる。

『やっぱり、きーくん?』

 その言葉に、息が止まった。やっぱり彼女だ。また出会えた。あの青春の続きを、二人でやり直せる。神様がきっと、そのために出会わせてくれたんだ。はやる気持ちを抑えながら、返信を丁寧に丁寧に、綴る。君に伝えたかった気持ちが、君がいなくなってから数年経った今でもまだ僕は抱えていると伝えなければ。