嫌そうな顔をしながらもメガネを押し上げて、私と向き合ってくれる。何度もこうやってちょっかいを出すうちに、きーくんは随分私に心を開いてくれた気がする。
「今日は購買のパンですか?」
「お弁当作る時間がなかったので。アオイさんもですか?」
「アオイちゃん」
「何ですか急に自分のことちゃん付けして」
「何回も言ってますよね、アオイちゃんって呼んでください」
はぁっと深いため息が聞こえた気がする。けど、きーくんは押しに弱く、ついつい私のわがままを聞いてくれることも知ってる。
「アオイちゃんもですか」
嫌々な声を出してるくせに、満面の笑みなんてずるい。ますます好きになってしまうじゃないか。
「きーくん! 今日の放課後、図書室で待ってるからまた一緒に過ごそうね」
恥ずかしさと熱さを誤魔化して、きーくんにバイバイする。きーくんと過ごす学校生活は、なんて素晴らしく美しい日々なんだろう。