「教えて欲しいことがあって」
「僕に?」
「えっと、あの、探してるものがあるんですけど」

 口から出まかせをつらつらと並べ立てる。探してるものなんてないし、何を口にすればいいかも今必死に考えている。

 きーくんは、口元を歪めてヘタクソな笑顔を浮かべた。その笑顔すらきーくんらしくて、私の口元も歪む。

「とりあえず連絡先教えてください」
「逆ナンですか?」

 少し猫背の、垂れ目が素敵な先輩。ここから、私ときーくんのラブストーリーは始まる。青春の一幕。まるで、物語みたいな、私たちの青春。

***

 購買の前で、きーくんを見つけて飛び掛かる。びくりっと揺れた背中は細くて、抱きしめれば折れてしまいそうだった。
 
「きーくん!」
「またですか、アオイさん」