特等席で本をめくりながら、いつも居る3名に目線を絶え間なく投げ続ける。誰も彼もきーくんみたいに見えて来た。どうしよう。
神様も意地悪じゃない? タイムリープさせてくれたんだから、せっかくならきーくんはこの人だよーって私に教えてくれたっていいじゃんか。
心の中で毒づきながら、読み終わった本を本棚へと戻す。特等席へ戻ろうとしたところで、候補者の一人とぶつかった。
「あ、大丈夫ですか? すみません」
あ、の言い方に固まる。見つけた。見つけた!
嬉しさが顔に滲み出てしまったようで、きーくんは不審そうな表情をしていた。想像していたよりちょっぴり垂れ目で、それでいて想像していたよりももっと優しそうで。
「あの、先輩ですよね」
「はい?」
「あ、私一年生の合田アオイっていいます」
「はぁ」
キョロキョロと視線を逸らしながら、無視してどこかへ行くことはしない。優しくて人見知りなきーくんらしい仕草に、くすりと微笑みが漏れた。
どうしよう。どうしたら、あなたの隣に並べるんだろう。