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 入学式の看板を見上げながら、半年間の努力を振り返る。本当に、私は頑張った。今日から私は、きーくんと同じ高校の生徒になったのだ。

 ここからが本当の戦い。きーくんについてわかってること。ペンネーム、安藤キク。私より二つ上。そしてこの高校にいて、男の人であること。あとは、高校在学中は彼女がいなかった事と、よく図書館に通っていた事。それくらい。

 顔もわからない、きーくんをなんとかして見つけることがきっと一番難しい。まずは、図書館に通うことから始めた。

 図書館の利用者は意外なほど少なくて、いつもまはらにしか人はいない。窓際の特等席。そこに陣取って、よくいる男性をピックアップしていく。いつも居る人なんて限られていて、大体は週に一度も来ない。週に三回以上居る人は、四名。一人は金髪のチャラそうな人だから、除外。絶対そんなタイプじゃない。

 残りの候補者は三名。そもそもわかったところで、どう声を掛けたらいいものか。新入生に急に声を掛けられても怪しいだけだろうし。

 悩みながらも本棚の間をすり抜けて、きーくんの好きな作家さんの本を手に取る。これがきっかけで声を掛けられたりは、絶対しない。口下手で、人見知りなきーくんが自分から声をかけることはありえないのだから。