神様にお祈りしてみればいっか。なんて軽い気持ちで訪れた神社は、さわやかな春の匂いが充満していた。青々とした木々は、陽射しを柔らかく屈折させて私の頭上に降り注がせている。

 深呼吸した胸は、やけに落ち着いていた。本当に叶ってしまうかもしれない。そんな予感に満ちていた。

 お賽銭を投げ入れて、目を閉じる。ぎゅっと握りしめた手に力を込める。

――あの人と、共に青春時代を過ごしたいです。私を過去に戻してください

 目を開ければ、変わらない視界。叶うなんて、一つも思っていなかったけど。

「アオイの願いごと、ながくない?」

 懐かしい親友の声にはっとして顔を上げる。あの頃と変わらない親友の姿に、悲鳴を上げそうになった。周りをよく見渡してみれば、青々としていた木々は赤々としている。

「今何月?」
「ボケてんの?」
「いいから!」
「九月だけど」

 親友と九月にお参りに来た記憶はある。高校の合格祈願に、中学三年生の秋に訪れた。ちょうど、その日に戻った!

 ここから半年間で、きーくんと同じ高校へ行く。きっと険しい道になる。だって、私馬鹿だもん。きーくんみたいに頭は良くなかった。大人になってから勉強から離れていたし。でも、きーくんと同じ高校に通える。