宿屋に着きそれぞれに部屋を取ると全と武仁はクリスティナとケインを部屋へ呼んだ。
2人に恩恵を付与するべく、またこれが初めてとなるためリンとズチを顕現させ具体的にどうなるのか、更にコウヨウとシーテンにはああ言ったものの、繋ぐ者とは全と武仁の任意で選択が可能なのかを聞いてみる事にした。
リンとズチがお馴染みのメロディとともに姿を表すと全が疑問を投げかける。
「リン、まず聖人の器は簡単に言うと物凄い力を持ちこの世界に召喚された人で、その聖人の器は厄災に対抗するべくこの世界で聖人の器の協力者となる繋ぐ者へ力を付与する事ができるんだったよね?」
全が問いかけるとリンは『左様でございます〜』と返し、全は話を続ける。
「その僕たちの協力者たる繋ぐ者は僕たちが任意で決めても良いものなのかな? それに、力を付与するって具体的には繋ぐ者にどんな変化があるの? 僕たちにデメリットはないのかな?」
全が立て続けに質問をすると『順を追ってご説明しますね〜』とリンは詳しく教えてくれた。
『まず繋ぐ者とは異世界から召喚された聖人の器へ、この世界の知識を教えたり新たな繋ぐ者への橋渡しを担ったりする言わば私たちのような案内役に近い存在だと思って下さい〜。私たち神の使いはもちろん、神々はこの世界に物理的な干渉ができないなどルールにより縛られています。そこを繋ぐ者の皆さんがフォローするような感覚でしょうか〜。前提として聖人の器とされる方が召喚されると繋ぐ者の方々と引き寄せられるかの様に巡り合います。ですから全様と武仁様が見込まれた方を繋ぐ者とするのは必然と言っても過言ではないでしょう〜♪』
リンが繋ぐ者について言い終わるとズチが続けた。
『力を付与すると言う事に関しては、全殿はスキル賢者の恩恵を、武仁殿はスキル勇者の恩恵を繋ぐ者へ使用する事により、対象の繋ぐ者はお二方には及ばずともそれを補佐できる程度の力を手に入れる事が可能となりますぞ! 具体的には全殿の恩恵の場合、通常であればレベルの上昇とともに経験値の母数も上がっていきレベルを上げる度に経験値を多く稼がなければならなくなり1レベル上げるのも難しくなっていきますが、恩恵を使用された対象者はその母数が100に固定されレベルはみるみる上昇しますぞ! これが全殿の賢者の恩恵、成長の促進効果ですな! 次に武仁殿、武仁殿の勇者の恩恵は対象者の成長を増幅させる、とありますが、これはレベル上昇時のステータス値の上昇を意味するもので、この世界の平均は1レベル上昇につき各ステータス値は適正によりバラつきはあるものの各1〜11ずつ上がっていきますが、勇者の恩恵を受けた者はこの上昇値が3倍になると同時にこれまでのステータス値も3倍に書き換えられると言うなんともずば抜けた恩恵なのですぞ! ちなみに全殿と武仁殿にデメリットはありませぬ。任意で解除しない限りは永続的に恩恵は受けられますしな!』
ズチの説明を聞き終わると改めてクリスティナとケインに「恩恵を使用し正式に繋ぐ者となってくれるかい?」と全は問う。
2人が「聞かれるまでもない!」と答えると全と武仁は2人に恩恵スキルを使用する事を決めた。
「クリスティナとケインに賢者の恩恵を使用!」
「クリスティナとケインに勇者の恩恵を使う!」
2人がスキルを発動するとクリスティナとケインの小指に鎖のような紋様が2本指輪のように刻まれた。
『これでクリスティナさんとケインさんは正式に繋ぐ者となりました〜。ちなみに、言いそびれていましたが聖人の器が繋ぐ者に力を付与できるようになるには厄災の種を浄化した時に授かる恩恵スキルが必要となりますし、恩恵の効果も通常の聖人の器から受けられるものと比べると単純に倍くらい高くなっております〜♪』
それを聞くと、スキルの入手方法や効果値も違うのか、と一同は思いながら「わかったよ、ありがとう」と全が伝えるとリンとズチは姿を消した。
「2人とも大丈夫かな? 不調があれば解除するし、大丈夫なら早速鑑定で見てみたいんだが......」
全が問いかけると2人は「力がみなぎるよ......是非鑑定してみてくれ!」と目をギラギラさせている。
全は鑑定を唱えると皆に見えるように開示と唱えた、この鑑定の開示はクリスティナが以前使用していたものを全が、そんな使い方もできるのが、と思い早速使用したのだ。
クリスティナ・フォン・カルカンド(伯爵)
種族/人間 年齢/26
職業(ジョブ)/騎士 レベル/40
称号/カルカーンの領主(民を守る為の剣は威力が2倍になる)
カルカーン騎士団団長(騎士団の士気を高め騎士団の攻撃威力が2倍になる)
繋ぐ者(勇者と賢者より恩恵付与)
HP/1320
MP/480
腕力/1320
腕力抵抗/1320
魔力/480
魔力抵抗/480
知性/1320
感知/1320
俊敏/1320
運/480
スキル
・鑑定
目視したあらゆる対象の情報を看破できる
ケイン・ド・アールベルト(男爵)
種族/人間 年齢/23
職業(ジョブ)/騎士 レベル/32
称号/騎士の鏡(敵の攻撃を引きつける)
カルカーン騎士団副団長(即死攻撃でも戦闘中1度だけHP1を残して耐える)
繋ぐ者(勇者と賢者より恩恵付与)
HP/960
MP/576
腕力/960
腕力抵抗/960
魔力/576
魔力抵抗/576
知性/576
感知/960
俊敏/960
運/960
スキル
・直感
危機察知、幸運察知を無意識に行う
鑑定結果を食い入るように確認するクリスティナとケインは恩恵の効果を肌でだけでなく視覚として改めて認識する。
「こうもステータスが上がるとズルをしたようで気が引けるな」
クリスティナがそう呟くと「俺たちが聖人の器ってんなら、クリスティナとケインは繋ぐ者の器って事だろ。なるようになっただけだ」と武仁が言った。
「それにしても、この世界の人はスキルは1人1つなのかい? 称号は2人とも複数あるし、称号によって効果もあるんだね」
全はクリスティナとケインのステータスウィンドウを見ながら2人に聞く。
「あぁ、複数スキルを持つ者はいないよ。スキルは先天的に備わる力でステータスの基礎値も先天的に定まっているが、称号は生き方によって得られるものだな。わかりやすく言えば一定の条件を満たす行動をしたり結果を残した時に、どう動いたかによって効果が付与される。だから同じ称号を持つ者がいてもその効果は様々だ」
ケインの説明を聞いて「じゃあやっぱ俺らの勘に狂いはなかったんだな!」と武仁はケインの肩に腕を回し、全もそれに同意し「素晴らしい称号だね!」と2人に言うとクリスティナとケインは少し照れながら謙遜した。
「しかし、それなら尚更盗賊だとかの奴らには称号っつぅもんがあんじゃねぇか。やっぱそれは世界や国だけのせいじゃねぇよ、努力は大事だ」
と武仁が言うと、カッセルとケインとともに国政について話したことを思い出したのだろう、それを聞いて領主であるクリスティナは「そうかもしれないな......」と言ったがケインは「もっともな事言いやがってー! みんながみんなお前みたいに強かないの!」笑いながらと言うとその後も他愛のない話を夜更けまで語り合ったのだった。