妙な教会に保護された3人は教会員達の異様な信仰ぶりに唖然とし立ち尽くす事しか出来ずにいたが、教祖のオダーが仕切り直すと謎の集会はお開きとなり、そこからも丁重に扱われた。

「お腹が空いておられるでしょう」とオダーが言うと教会員はすぐに豪華な食事を用意し「お着物が汚れておられますからお着替えをご用意致します」とオダーが言うと絹の様な替えの服を手にしたシスターが1人ずつに支え湯浴みを手伝う。
湯浴みを終えた3人ははじめのベッドが3台並ぶ豪華なプライベートルームへ戻る。

「本日は召喚されたばかりで様々な疑問をお抱えの事とお察し致しますが、混乱の渦中かと存じます。この世界についてや聖人の器と言う存在についてなど、明日改めてお話させて頂きます。まずはゆっくりとお休み下さい」

そうオダーは言うと部屋を後にした。
3人きりになったところで聖人、虎次郎、龍己は話し始める。

「すげぇ崇められてさ、すげぇ至れり尽くせりなんだけど......ヤバい宗教って感じじゃね?」

「......うん。僕たちどうなっちゃうのかなあ......。でも聖ちゃんと一緒で良かったよぉ!」

「......異世界転移」

3人はいまいち会話が噛み合っていないが、龍己が「三人寄れば文殊の知恵......」と呟くとこれまたいまいち理解はしていない様子だが聖人は「俺たち3人いればなんとでもなるよな」と声高らかに言い虎次郎は「聖ちゃん最強だもんね」と囃し立てた。

いつしか眠りに落ちた3人。
よほど疲れたのか成長期の彼等だからなのかぐっすりと眠り、気が付けば窓を覆うカーテンからは太陽の光が漏れる。
その光は聖人の顔を照らすと眩しさを感じた聖人は目を覚ました。

一足先に目覚めた聖人はまだスヤスヤと眠る虎次郎と龍己を起こすため部屋のカーテンを一気に開けた。

「おらあ! 起きろ起きろ! 朝だぞー!」

そう言うと「眩しいよ聖ちゃん」と言う虎次郎と無言で薄目を開ける龍己を見てゲラゲラと笑った。

部屋に備わった洗面台で顔を洗ってから談笑していると、ノック音に続き部屋の外からオダーの声が聞こえた。
オダーは朝食の準備ができたと3人を呼びに来たようで「朝食を済ませた後にこの世界についてお話をしましょう」と言った。

3人は昨晩のうちに用意されていた服に着替えると部屋を出る。

部屋の前には昨日と同じくシスターが待機しており、案内されるがままに通された食堂で朝食を摂ると頃合いを見計らいシスターは「オダー様の元へお連れ致します」と言い3人は再び案内されるがままについて行く。
館内は広いお屋敷のような造りで案内がなければ迷子になりそうである。

案内に従い進む3人、連れられた入ったのは会議室の様な部屋だった。

「昨晩はよく眠れましたか? 朝食はお口に合いましたでしょうか? お召し物もよくお似合いでございます」

オダーがうすら笑みを浮かべながら言った。

「あぁ。それはいいんだけどさぁ、説明してくれない? 召喚されたのはわかったけど俺たちどうされんの? で、帰れんの?」

聖人はドカっと椅子に腰を下ろすと本題を急かした。

「流石聖人様、失礼致しました。では早速お話させて頂きます。ここはこの世界の中心都市、王都ボルディアから東北に位置する聖ライガ教会です。皆様は1000年に1度起こるとされる厄災を退けるために異界より召喚されました。厄災とは魔物が溢れ返る深淵(アビス)が各地に突如として現れる現象の事を指しております。この世界では召喚された人々の事を聖人の器と呼んでおり、昨日の鑑定により御三方には雷神様の加護が付与されているのを確認致しました。雷属性のあらゆる魔法が使用でき、更に初期ステータスたるやこの世界の常人の100倍となっておりました。その救世主とも言える聖人の器の御三方の力を持ってして、この世界をお救い頂きたいのです。その為に我々聖ライガ教会は存在し、お支えできる事を光栄に想いこの身を捧げる覚悟で御座います」

「大体わかった。んで、その厄災とやらを鎮めなきゃ俺らは帰れんねぇのかよ? 帰れんなら今すぐ帰りてぇんだけど」

「心中お察し申し上げます。しかしながら仰る通り、厄災を鎮める事により元の世界に繋がる扉(ゲート)が開かれるとされております」

「だったら早いとこ厄災終わらせて帰ろうぜ!」

聖人は振り返り後ろに立っていた虎次郎と龍己に言った。
2人は真剣な顔で深く頷くとオダーは話を続けた。

「厄災の起こる日までまだ少し時間が御座います。まずは厄災の予兆とされている厄災の芽と呼ばれる苗木を探し、その苗木の本体である種を破壊して頂きたいのです。深淵(アビス)は厄災の芽を破壊する事で段階的に封印を施す事が可能とされております。御三方には厄災の起こる日までに7つ現れると言う厄災の芽を1つでも多く破壊して頂きたいのです。この世界では慣れず不自由も多いとは思いますが、出来うる限り如何なるお申し付けにも応じる所存で御座います。どうか我々にしばらくのお時間とお力添えをお願い致します」

そう言うとオダーは深々と頭を下げた。

「......わかったよ、頭上げろ。虎と龍もいるんだし、ちょっとこの世界でチート無双かまして凱旋帰還ってのも悪くねぇ! それにここは異世界なんだろ? 日本の法律も関係ねぇんだし女とうまい飯に酒だ! オダーって言ったか? ちゃっちゃと厄災とやらは俺らが終わらせるからよぉ、それぐらいは良いだろ?」

「せ、せ、聖ちゃん......! なんかダークヒーローっぽいよぉ......! そんな聖ちゃんもカッコいい......」

「......」

オダーは「お安い御用です。直ぐに手配致します」と言うと、一通りの話も終わり3人はプライベートルームへ戻った。