*
毎週木曜日。
早瀬は絵を描き、自分はその姿を見る。
それだけの関係。
けれど、いくつか言葉を交わすうちに互いの呼び方が名字から名前になって、軽い冗談を交わせるほどに仲良くなった。
「豊くん、いつも見ているだけで退屈じゃないの?」
「いいや? 早瀬さんの笑ってる顔見るのは面白いから」
「面白いって……私が変な顔しているみたいじゃない」
「……そうだって言ったら?」
「もう見に来ないでって言う」
「それは困る。大丈夫、変な顔ではないから」
「変な顔ではってどういう事よ⁉」
「はははっ」
そんな些細な会話が出来ることも嬉しくて、豊はもっと早瀬といたいと思うようになった。
自分に向けられている目にはキャンバスに向けられる激しさはない。
豊を見る早瀬の目は、ただの同級生のもの。
けれど、絵を描いているときの綺麗な彼女が年相応の女の子の目になって自分を見ている。
それもまた嬉しかった。
その感情を自覚した頃には、豊はもう彼女を好きになっていた……。
毎週木曜日。
早瀬は絵を描き、自分はその姿を見る。
それだけの関係。
けれど、いくつか言葉を交わすうちに互いの呼び方が名字から名前になって、軽い冗談を交わせるほどに仲良くなった。
「豊くん、いつも見ているだけで退屈じゃないの?」
「いいや? 早瀬さんの笑ってる顔見るのは面白いから」
「面白いって……私が変な顔しているみたいじゃない」
「……そうだって言ったら?」
「もう見に来ないでって言う」
「それは困る。大丈夫、変な顔ではないから」
「変な顔ではってどういう事よ⁉」
「はははっ」
そんな些細な会話が出来ることも嬉しくて、豊はもっと早瀬といたいと思うようになった。
自分に向けられている目にはキャンバスに向けられる激しさはない。
豊を見る早瀬の目は、ただの同級生のもの。
けれど、絵を描いているときの綺麗な彼女が年相応の女の子の目になって自分を見ている。
それもまた嬉しかった。
その感情を自覚した頃には、豊はもう彼女を好きになっていた……。