繰り返し彼の夢を見る葵の現象が不思議だったから、長い年数この学校にいる、保健室の先生に、ちらっと聞いてみた。
「先生! ちょっと聞きたいことあるんですけど……」
まずは、葵から聞いた、彼の特徴を話した。
「髪の毛がサラサラで、色が白くて、ひょろっとした、とにかく笑顔が可愛くて、優しそうな美男子っていました?」
話し終わった後すぐに、こんな特徴の人なんて山程いるんじゃないかなって考えた。
「三年二組の僕らの教室で……」
葵の教室を伝えると、突然、先生の目がぱっと見開いた。
「私、その人の事、知ってる。あのね……」
予想外の答えが返ってきた。
「その子、五年前に亡くなった、ここの学校の生徒だと思う。きっと」
そう言いながら先生は目を細め、うつむいていた。
葵の名前は言わずに、ある人がその教室で眠っていた時に、夢の中にその人が現れたのだと伝えると、先生は多分って言っていたけれど、何故、彼は、夢の中に現れるのかも教えてくれた。
ただの夢ではない?
その話を聞いてから、不安が積み重なっていく。いつか、幽霊の彼が、あの世に葵を連れて行ってしまうのではなないか、そのまま眠りから覚めなくなってしまうのではないかと。
だから彼女がこの教室で眠る時、僕は彼女が起きるまで隣の席で見守る事にした。
葵は不思議がっていたけれど、いなくなってしまうのが何よりも嫌だから。
いつも柔らかな寝息をたてながら、気持ちよさそうに眠っている。
そして僕は、相変らず彼に嫉妬をしていた。実際に存在していた人だったから。
でも事情を知ると、これで良いのかな?とも思うようになっていった。
先生から聞いた話は、葵には何も伝えないでいた。
葵の寝顔を眺めながら、先生から聞いたもうひとつの話の事について考えていた。
「夢に現れる理由に関係ないのかも知れないけどね、教卓の中の目立たない場所にガムテープが貼ってあってね、それを剥がすと、紙に彼が大切にしていた物が包んであるの」
それは先生が貼ったものらしかった。
他の先生も知っているらしいけれど、生徒は誰も知らないみたいだった。
彼は病気で亡くなってしまったらしい。詳しく病名とかは聞かなかったけれど、身体が弱く、保健室によく来ていたようで。
教卓の中を覗くと、一番奥の上の端辺りに、色が周りに馴染んでいるベージュのガムテープが貼ってある。じっくり覗く人はそうそういなさそうだから、気づかれないっぽい。剥がすと、先生が言っていた通り、白い紙に何かが包まれている。それを開くと、とても小さな、僕の親指くらいのシロクマのキーホルダーが出てきた。
彼が大好きだった今は亡きおばあちゃんと一緒に大好きな動物園に行った時、買って貰ったらしい。
「僕だと思ってね!って彼が亡くなる前、そう言って私にくれたの。色々考えて、彼は日頃、調子が悪い時に保健室でずっと『みんなと授業を受けたい』って言っていたから、彼が大好きだったあのクラスにずっといてもらう事にしたの」
って先生は言っていた。
「先生! ちょっと聞きたいことあるんですけど……」
まずは、葵から聞いた、彼の特徴を話した。
「髪の毛がサラサラで、色が白くて、ひょろっとした、とにかく笑顔が可愛くて、優しそうな美男子っていました?」
話し終わった後すぐに、こんな特徴の人なんて山程いるんじゃないかなって考えた。
「三年二組の僕らの教室で……」
葵の教室を伝えると、突然、先生の目がぱっと見開いた。
「私、その人の事、知ってる。あのね……」
予想外の答えが返ってきた。
「その子、五年前に亡くなった、ここの学校の生徒だと思う。きっと」
そう言いながら先生は目を細め、うつむいていた。
葵の名前は言わずに、ある人がその教室で眠っていた時に、夢の中にその人が現れたのだと伝えると、先生は多分って言っていたけれど、何故、彼は、夢の中に現れるのかも教えてくれた。
ただの夢ではない?
その話を聞いてから、不安が積み重なっていく。いつか、幽霊の彼が、あの世に葵を連れて行ってしまうのではなないか、そのまま眠りから覚めなくなってしまうのではないかと。
だから彼女がこの教室で眠る時、僕は彼女が起きるまで隣の席で見守る事にした。
葵は不思議がっていたけれど、いなくなってしまうのが何よりも嫌だから。
いつも柔らかな寝息をたてながら、気持ちよさそうに眠っている。
そして僕は、相変らず彼に嫉妬をしていた。実際に存在していた人だったから。
でも事情を知ると、これで良いのかな?とも思うようになっていった。
先生から聞いた話は、葵には何も伝えないでいた。
葵の寝顔を眺めながら、先生から聞いたもうひとつの話の事について考えていた。
「夢に現れる理由に関係ないのかも知れないけどね、教卓の中の目立たない場所にガムテープが貼ってあってね、それを剥がすと、紙に彼が大切にしていた物が包んであるの」
それは先生が貼ったものらしかった。
他の先生も知っているらしいけれど、生徒は誰も知らないみたいだった。
彼は病気で亡くなってしまったらしい。詳しく病名とかは聞かなかったけれど、身体が弱く、保健室によく来ていたようで。
教卓の中を覗くと、一番奥の上の端辺りに、色が周りに馴染んでいるベージュのガムテープが貼ってある。じっくり覗く人はそうそういなさそうだから、気づかれないっぽい。剥がすと、先生が言っていた通り、白い紙に何かが包まれている。それを開くと、とても小さな、僕の親指くらいのシロクマのキーホルダーが出てきた。
彼が大好きだった今は亡きおばあちゃんと一緒に大好きな動物園に行った時、買って貰ったらしい。
「僕だと思ってね!って彼が亡くなる前、そう言って私にくれたの。色々考えて、彼は日頃、調子が悪い時に保健室でずっと『みんなと授業を受けたい』って言っていたから、彼が大好きだったあのクラスにずっといてもらう事にしたの」
って先生は言っていた。