葵が『彼』と出会ったのは、僕達が中学三年生になって、数ヶ月たった時だった。
前日夜更かしをしてゲームに夢中になっていたせいで、授業中に居眠りをしてしまい、初めて出会った、らしい。
「今日ね、授業中、一瞬寝ちゃったんだけどね、夢の世界で、カッコよくて、理想の男の子に会えたんだぁ」
僕たちが過ごしている教室には机が縦五列と横六列あり、葵は一番窓側で前から三番目、僕はその隣の席だった。
帰る時間、隣の葵は鞄に教科書を入れたりしながら、ゲームのキャラの話題で盛り上がったんだとか、その夢の内容を詳しく話してきた。
その時はただ「へぇ、そうなんだ」って軽く返事をして、聞き流す程度だった。僕は嫉妬なんて全くしていなかった。だって、夢の中の人だから。しかもどうせ、夢だから、もう二度と会うって事はないだろうなって思っていたから。
初めて葵が夢の中で彼と出会ってから、数日がたった日、忘れられなくて、もう一度会いたいからって放課後、誰もいない教室で、再び葵は眠ってみたらしい。
「まさか、また会えるとは思わなかったよね!」
「へぇ、そうなんだ」
偶然かな? って思ったけれど、それから何回も会えたらしく、そのたびに彼女は報告してきた。
葵のその夢が、ずっと続いている。
彼女が、今も彼に会い続けている。
いつも葵は、笑顔で語っていた。
「夢の中でね、今日も私の事を好きって言ってくれてね、会いたいたって!」
そう言っていた時の彼女は、可愛くてキラキラしていた。
きっと葵は、夢の中に現れる彼に、恋をしていた。その想いが僕に向けられたらよいのに。顔も知らない葵の夢の中の彼に、僕は嫉妬していた。
まるでリアルな恋愛話を聞かされる気持ちになってきて、だんだんと辛くなってきた。
僕は三年間、葵と同じクラスだった、彼女の事が好きだった。ひとめぼれ、ではないけれど、最初から可愛いなとは思っていて、少しずつ彼女の魅力に惹かれていった。どんなところに惹かれたのかというと、周りが面倒くさがる事でも、真剣に取り組むところとか、優しいところ、あとは、か弱そうに見えるのに強そうな性格とか。いっぱいありすぎて、上手くまとまらない。
今まで特に好きと感じなかった性格や誰かがしていた仕草も、好きになった葵がする事だから、それらが全部好きになった。
本当に葵の事を考える時だけは、上手くまとめられなくなるし、僕が彼女に言った言葉や行動で傷ついたりしてないかな?とか、些細な事も気になりすぎて、もうどうしたら良いのか分からなくなる。もう、それくらい好き。
そんな彼女が、夢の中の人だけど、僕の知らない人と親密になっていくのが嫌だった。
放課後、眠る葵をすぐに起こせば良い事なのに、それで嫌われたら、もう僕は立ち直れないなとか考えていたら出来なくて。二人が夢の中で会っている時間、教室に入る事すら出来なくて。
僕は放課後、よく玄関で待っていた。彼女が玄関に向かってくるタイミングで靴紐を結び直すふりをしたりして、ちょうど今帰るんだ。偶然会ったね! みたいな雰囲気を出して。
いつものように葵をこっそり待っていた時、雨が降っていて、葵が「傘を忘れた」って困っている時に、傘を貸せたりもしたから良かった。僕は雨の中、走って帰ったけど。
前日夜更かしをしてゲームに夢中になっていたせいで、授業中に居眠りをしてしまい、初めて出会った、らしい。
「今日ね、授業中、一瞬寝ちゃったんだけどね、夢の世界で、カッコよくて、理想の男の子に会えたんだぁ」
僕たちが過ごしている教室には机が縦五列と横六列あり、葵は一番窓側で前から三番目、僕はその隣の席だった。
帰る時間、隣の葵は鞄に教科書を入れたりしながら、ゲームのキャラの話題で盛り上がったんだとか、その夢の内容を詳しく話してきた。
その時はただ「へぇ、そうなんだ」って軽く返事をして、聞き流す程度だった。僕は嫉妬なんて全くしていなかった。だって、夢の中の人だから。しかもどうせ、夢だから、もう二度と会うって事はないだろうなって思っていたから。
初めて葵が夢の中で彼と出会ってから、数日がたった日、忘れられなくて、もう一度会いたいからって放課後、誰もいない教室で、再び葵は眠ってみたらしい。
「まさか、また会えるとは思わなかったよね!」
「へぇ、そうなんだ」
偶然かな? って思ったけれど、それから何回も会えたらしく、そのたびに彼女は報告してきた。
葵のその夢が、ずっと続いている。
彼女が、今も彼に会い続けている。
いつも葵は、笑顔で語っていた。
「夢の中でね、今日も私の事を好きって言ってくれてね、会いたいたって!」
そう言っていた時の彼女は、可愛くてキラキラしていた。
きっと葵は、夢の中に現れる彼に、恋をしていた。その想いが僕に向けられたらよいのに。顔も知らない葵の夢の中の彼に、僕は嫉妬していた。
まるでリアルな恋愛話を聞かされる気持ちになってきて、だんだんと辛くなってきた。
僕は三年間、葵と同じクラスだった、彼女の事が好きだった。ひとめぼれ、ではないけれど、最初から可愛いなとは思っていて、少しずつ彼女の魅力に惹かれていった。どんなところに惹かれたのかというと、周りが面倒くさがる事でも、真剣に取り組むところとか、優しいところ、あとは、か弱そうに見えるのに強そうな性格とか。いっぱいありすぎて、上手くまとまらない。
今まで特に好きと感じなかった性格や誰かがしていた仕草も、好きになった葵がする事だから、それらが全部好きになった。
本当に葵の事を考える時だけは、上手くまとめられなくなるし、僕が彼女に言った言葉や行動で傷ついたりしてないかな?とか、些細な事も気になりすぎて、もうどうしたら良いのか分からなくなる。もう、それくらい好き。
そんな彼女が、夢の中の人だけど、僕の知らない人と親密になっていくのが嫌だった。
放課後、眠る葵をすぐに起こせば良い事なのに、それで嫌われたら、もう僕は立ち直れないなとか考えていたら出来なくて。二人が夢の中で会っている時間、教室に入る事すら出来なくて。
僕は放課後、よく玄関で待っていた。彼女が玄関に向かってくるタイミングで靴紐を結び直すふりをしたりして、ちょうど今帰るんだ。偶然会ったね! みたいな雰囲気を出して。
いつものように葵をこっそり待っていた時、雨が降っていて、葵が「傘を忘れた」って困っている時に、傘を貸せたりもしたから良かった。僕は雨の中、走って帰ったけど。