私――君塚(きみづか)双葉(ふたば)は開式の辞を聞きながら、体育館の天井にはさまったバレーボールを眺めていた。

 ……やっぱり退屈だな。

 壁には紅と白の幕が隙間なく張られていて、生徒たちの胸元には、小さな花が咲いている。

 今日は、私の通っていた高校の卒業式だった。

 約三年前に入学した、憧れの高校。

 あれからもう、三年も経つのか……。

 長いようであっという間の高校生活だった。



 中学二年生の夏休みに行った学校見学で、私はこの高校に惹かれた。

 制服が可愛くて、校風も自由。校舎は綺麗だし、イベントも多い。

 とにかく、まだ中学生だった私の目には、すべてが輝いて見えた。

 どうしても、この高校に入りたいと思った。

 自分の意思で大きな決断をしたのは、もしかすると初めてだったかもしれない。

 最初は偏差値が足りず、くじけそうにもなったけれど、両親に頼み込んで塾にも通わせてもらい、どうにかギリギリで合格をつかみ取った。

 直前の模試でも、判定は決して良くなかった。本当にギリギリだった。よく合格したな、と今でも思うくらいに。

 高校入試本番の日は、たぶん人生で最も緊張していた。

 詰め込んだ知識が、手を離した風船みたいに、どんどん遠くに飛んでいってしまうような気がして、早く試験が始まってほしいと願いながら、開いた英単語帳に載っている単語をじーっと眺めていた。

 そんな中で、一つだけ印象に残っていることがある。

 最初の科目が始まる少し前、隣の人に突然話しかけられたのだ。