僕たちがこうして結婚できたのも小森夫妻に紹介してもらったからだった。結婚式は内輪だけで行ったので、友人などは招待していなかった。それで僕は奈緒に小森夫妻を食事に招待することを提案した。

このマンションでもいいが、4人が集まるには少々手狭だ。それに妊娠している由美さんに負担をかけないようにと、奈緒の提案で二子玉川のイタリアンレストランに招待して4人で食事をすることにした。

小森君に電話すると喜んで招待を受けてくれた。土曜日のお昼に一緒に食事をすることになった。奈緒は12時に4名の予約を入れてくれた。

お昼少し前に僕たちは到着した。窓際の席だったので、小森夫妻が手を繋いで歩いてくるのが見えた。由美さんはまだ4か月なのでお腹は目立たない。

「悪いなあ、食事に招待してもらって」

「いや、僕たちがこうして結婚できたのも小森君と奥さんのお陰だから」

4人は席に着くとビールで乾杯した。由美さんはジンジャエールで乾杯。つまみにピザを3種類ほど注文した。

「ここは奈緒が由美さんと一緒に来ていたところだろう。僕たちもここを利用させてもらった。ここは奈緒にプロポーズした思い出の場所でもあるんだ」

「そうなんだ。僕たちも嬉しい。ところでもう奈緒と呼び捨てにしているのか?」

「ああ、彼女がそうして欲しいと言うものだから、僕は奈緒さんでもいいんだが」

「のろけるなよ。僕は二人の時は由美ちゃんと呼んでいるけどね」

「そっちこそ、いい感じじゃないか」

「もともと小森君とは入社以来気が合うと言うか性格が似ているんだ。だから、お互いの奥さんも性格が似ているように思う」

「植田さんは実さんを通して私が話した奈緒さんの情報を仕入れていたんですよね」

「そうなんですか?」

「ああ、奈緒はなんでも由美さんと相談していたみたいだから」

「実さんが私に奈緒さんのことをよく聞くので、それに二人はよく飲みに行っているみたいでしたから、もしやと思っていました。それで奈緒さんの気持ちを聞いて、実さんに情報を流していました。私と奈緒さんはとても性格というか体質が同じというか、よく分かるんです。考えていることや悩みが」

「由美さんが言いにくいところはよく理解しています。奈緒も同じだと思います」

そういうと由美さんは顔を真っ赤にした。小森君は笑いを必死でこらえている。

「それで由美さんが奈緒に良いことをいっぱい教えてくれているみたいで感謝しています。これからもよろしくお願いします」

「ええ」

「それから、なぜ小森君たちはそんなに早く子供をつくったんだ?」

「早くもないと思うけど」

「もともと赤ちゃんは天からの授かりものだと思っていました。それに私の友人が赤ちゃんを作ろうと避妊をやめてもなかなかできなかったと言っていました」

「だから、僕たちは結婚したときから避妊はしていなかった」

「それなら、確かにすぐにできたわけでもないね」

「僕たちはよく話し合ってから決めようと思っている。それに止めたとたんに妊娠することもあり得るからね」

「今は生まれるのが楽しみになっている」

「男の子と、女の子とどっちがいいの?」

「僕は女の子で由美ちゃんは男の子」

「いつ頃分かるの?」

「5か月を過ぎないと分からないと聞いているけど、どっちでも健康な子供ならそれで言うことはない」

「由美さん、仕事はどうするの?」

「しばらくは育児に専念したいので、仕事はやめようと思っています」

「僕は由美ちゃんの思いどおりにさせてやろうと思っている」

「植田君と奈緒さんはどうなの?」

「まだ、二人でそこまで話し合っていないけど、僕は奈緒の思いどおりにさせてやろうと思っている」

「私は健二さんの意見も聞いて決めたいと思っています」

「なんか、同じことを言っている夫婦だな」

「それは僕と小森君、奈緒と由美さんの性格がそれぞれ似ているからだと思う。だから、小森夫妻が僕たちに取っても参考になるしお手本になる。これからも仲良くして下さい」

「こちらもそう思っています」

小森夫妻は僕と奈緒を結びつけてくれた恩人だから、これからも大切にしたい。ただ、あまり小森君になんでも相談するのは気を付けよう。由美さんを通して奈緒に筒抜けになる。二人のためにうまく相談することにしよう。

これで僕たちのお見合い結婚のお話はおしまいです。めでたし、めでたし。