20歳になって初めての飲み会。誕生日に菜々と一緒に過ごせなくなった淋しさと、気心の知れた友達の家での宅飲みだったこととが相まって、気が緩んで、ペースも考えずにお酒を飲んだ。

 気が付けば終電の時間が迫っていて。俺を含めた何人かは、飲み場所を提供してくれた友達の家に泊めてもらった。

 早朝、目覚めてスマホを見ると、菜々からラインが届いていた。

『お誕生日おめでとう。今日はごめんね……』

 急いで家に帰ると、冷蔵庫に手作りっぽいホールケーキが入っていた。

『洸希へ。お誕生日おめでとう。食べきれなかったら捨ててね』

 ケーキの箱に添えられていたのは、菜々の手書きのメッセージ。

 ケーキは事前に作っていたのだろうか。俺との約束を守れなかったことを気にして、バイトのあとにケーキを持って会いに来てくれたのかもしれない。

 シンク横の食器置きには、菜々がコーヒー飲むために使ったらしいマグカップが洗って立てかけてある。

 バイトのあと家に来た菜々は、どれくらい待ってくれていたんだろう……。

 友達の家で不貞腐れて酔い潰れていた俺は、昨夜帰宅しなかったことを後悔した。

 すぐに菜々に電話をかけたけど、彼女は出なかった。

 大学で会ったら、謝ってお礼を言わないと……。

 菜々が冷蔵庫に入れて置いてくれたケーキは、大学に行く前に四分の一ほど食べた。二日酔いで胃の中が若干気持ち悪かったけど、菜々のケーキは今まで食べた誕生日ケーキの中で一番美味かった。