俺の話を、いつもにこにこと楽しそうに聞いてくれる菜々はかわいかったし。バイトのあとに疲れて家に行くと、ミルクと砂糖がたっぷりのカフェオレを淹れて出迎えてくれる菜々の優しさが愛おしかった。
漠然とだけど、大学を卒業して就職したら一緒に住みたいなんていう話もしていた。
俺と菜々は、うまくいっていたと思う。
そんな彼女との関係に綻びが生まれたのは、俺の20歳の誕生日。
授業が終わったあとに菜々が俺の家で誕生日のお祝いをしてくれるはずだったのが、彼女のバイト先で急な欠員が出て、シフトに入らなければいけなくなった。菜々も最初は予定があるからとシフト変更を渋ったみたいだが、「どうしても人手が足りない」と店長に頼み込まれて、最終的に断れなかったらしい。
菜々は「必ず埋め合わせするから」と、何度も謝ってくれた。仕方がないとは思ったけど、俺はちょっとだけ不満だった。
授業が終わったあと、不貞腐れた気持ちで帰ろうとしていたら、学部のゼミの仲間たちから家飲みに誘われた。