後悔しているのは、菜々じゃない。

 カナエのことで誤解されたときも、菜々から「別れよう」と言われたときも、俺はもっと必死になるべきだった。何があってもいつも笑って許してくれる菜々の優しさに甘えていてはダメだった。

 ほんとうに後悔してるのは、泣きそうな顔で別れを告げてきた菜々を引き止められなかった自分だ。

 もう間に合わないかもしれないけど……。俺は菜々との関係を、このままで終わらせたくない。

 ゴミ箱の指輪のケースを拾い上げると、ネックレスとともにズボンのポケットにねじ込む。そうして、部屋を飛び出した。