バイトを終えて帰宅した俺は、ワンルームの部屋のベッドに腰かけると深いため息を吐いた。

 ポケットの中には、佐藤菜々が拾ってくれたネックレス。テレビの横の棚には、白い箱に赤のリボンがかかった指輪のケース。

 これ、どうするかな……。

 菜々に振られて、お役御免となったネックレスと指輪。それらの処分に困っていると、高本からラインが入った。

『洸希、菜々ちゃんと別れたの? 他学部の友達が来週行く合コンメンバーに菜々ちゃんがいるって言ってるけど』

「は?」

 ショックと、怒りと、悲しさと。いろんな感情がごちゃ混ぜになった声が出た。

 合コンてなんだよ。俺と別れたから、新しい相手を探すのか……?

 何かの間違いであってほしい……。でもほんとうは、俺のこと信じきれないなんて言っておいて、菜々だって裏切っていたのかもしれない。

 立ち上がると、テレビ横の棚に置いた指輪のケースを力任せにつかむ。それをゴミ箱に投げ込んだあと、ポケットに入れたネックレスを引っ張り出した。そのままゴミ箱に捨ててしまおうとしたとき、なぜか、配達先で出会った女の人の言葉が耳に蘇る。

『持ち主に返してあげてほしい。もしかしたら、後悔してるかもしれないから』

 佐藤菜々の言葉を思い出しながら、俺はネックレスをぎゅっと握りしめた。